手を引っ張られ、強制的に足を止められた。その手を叩くように振り払おうとするがなかなか離れない。
「やめて、望月くんも私がいない方がいいんでしょ!」
「え、ええ? どういうことだよ、落ち着いて話を」
「だって、彼女がそこにっ」
 改めて望月くんを見ると、その隣に彼女はいなかった。ただ、焦っておろおろしている彼の顔がそこにあるだけ。
「彼女? て、俺の彼女?」
 困惑しながら問われ、こくりと頷くと彼は首を傾げた。
「俺はずっと一人だよ。怖いこと言わないでくれ……」
 やっと私の手を離した望月くんはびくびくしながら、辺りを見回す。その様子が嘘ではないことを裏付け、私も落ち着きを取り戻していった。
「ご、ごめん……」
 気まずくて俯くと、望月くんの頭が下がってきた。
「いや、こっちこそごめん」
 驚いて顔を上げる。彼は、私に頭を下げていた。
「何が? やめてよ、そんな」
「星村、昨日から様子が変だったから。俺が紹介したいって言ったからだろ、星村の気も知らないで、ごめん」
「私の気って……」
 どきりとした。落ち着いた今だから思えるが、実に子どもじみたこと。それを彼に知られていたなんて。恥ずかしさでいたたまれなくなる。
 顔を上げ、気まずそうに望月くんは言いのけた。
「彼氏が欲しくてたまらないんだろ、自慢みたいになってごめん」
「……はあ?」
 呆れて言い返すのを忘れてしまう。彼はその調子で続けた。