「ねえ、お姉ちゃん。このままいけばまた昔みたいに家族の団欒ができるかもしれないよ、凄い嬉しい!」
「はあ? 勘弁してよ」
 私は彼女の手を振り払った。大きな目が驚いて更に見開かれる。その目を見つめ返した。
「家族の団欒? そんなのあった?」
「あったじゃん! みんなが帰ってきて、ソファーに並んでテレビ見たり、リビングでそれぞれ勝手に過ごすのんびりした時間が! 私、あの時間が大好きだったんだよ」
「それを私が壊したって?」
 困った顔で見つめ返してくる。自分は何も悪くない、そう言いたげな表情が、苛立ちをふつふつと昇らせる。
「そんなこと言ってないよ、お姉ちゃん」
「言ってるよ! 目がそう言ってる! 私のせいだって、お母さんがああなったのは私のせいって言いたいんでしょ? そうだよ、私があんな風にしてやったんだ! それの何が悪いのっ」
 誰も、守ってくれないくせに。昔も、今も、これからも。自分で自分を守るしかないじゃないか。
「歩咲」
 ハッと、した。我に返って顔を上げると、真っ暗な部屋の入口、明かりの付いたその場所で、立ち尽くす父がいた。
「そうやって苛立ちに任せて人を傷付けるのはお前の得意技だな。ずっとそうやって生きればいい。誰もお前の周りにはいなくなるだろう。それが望みだろ? 来い、蒼菜」
「でも」
「もういいから」