「望月くんが? 無理でしょ、そんなの。優柔不断で気の弱いあなたにそんなこと出来ない。彼女にも、まだ素を出せていないのに」
 言ってからじゃ遅いのに、やっと言ってしまった重大さに気付いて口を噤んだ。こんなことを言いたかったわけじゃない。何て言えば良かったのか。
 望月くんは、酷く傷付いた表情をしていた。
「分かった、やめとくよ。……ごめんな」
 怒っていいのに。お前に何が分かるんだって突き放していいのに。望月くんは、その日ずっと黙っていた。
 起きた後も、気持ちは最悪だった。まだお腹が痛む。二日目になると、いつもなら軽くなっているのに。ため息が出た。今更になってあの時言いたかった言葉が思いつく。
 私の居場所を、壊さないで欲しい。私たちだけの居場所であって欲しい。
 ただ、望月くんにそう言いたかっただけなのに。傷付けてしまった。私の主観で、でも恐らく彼自身も感じていたことを突き付けてしまった。
 今日は学校に行く気にならなかった。私は待ち合わせ場所に行くであろう花乃子に連絡をして、再び眠りについた。
 起きたのは昼過ぎ。腹痛は幾分和らいでいて、一階へ降りると、母がテレビを見ながらラーメンを啜っていた。
 私も同じインスタントラーメンでいいやと台所に立つ。鍋をコンロに置くと、ガシャン、と音が鳴った。私の乱暴者め。もう少し静かにできないものか、と呆れていると視線を感じた。
 顔を上げて、息を飲んだ。
 母がこちらを凝視している。目が合っている。頭に血が上っていくのを感じる。息を忘れてしまう。