「こ、こわ……。何だよ」
「別に。起きたら?」
「いやあ、それがベッドがあったら寝転びたい性分で」
「……何それ」
 本当に何それ。少しだけ口角が上がる。気持ちが和らいでいくのがわかった。
 この時間が、好きだ。いつしか夜を待ちわびている私がいる。ここが私の真の居場所。ここでなら、誰も傷付けないで済むし、私も傷付かない。ここにいるのが、望月くんで良かった。
 よ、と声を出して起き上がり、彼が私の顔を覗き込む。何か言いたげな表情に首を傾げた。
「あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど、いい?」
「まあ聞ける範囲なら」
 おずおずと聞いてくるものだからちょっと身構えてしまう。しばらく葛藤しているのか、目を泳がせたあと、彼は意を決して、口を開いた。
「俺の彼女を紹介させてほしい」
「……は?」
「星村とここで話すこと、この時間を俺は大切に思ってる。でも同じくらい、彼女のことも大切だから紹介させて欲しい」
「……えっと、つまり、私とここで会ってしまってることに、罪悪感があるってこと?」
 望月くんは、頷かなかった。ただ、目を逸らした。それが肯定を物語っている。
 私は、血の気が引いていくのを感じた。
「私たちの関係は、どう説明するの?」
「それは……正直に」
「正直に言って、誰がこんなこと信じるの? 信じて貰えなくても、夜に男女が会ってる、そこだけ抜き取られたら、浮気って思われてもおかしくないんだよ?」
「そ、それは……説得させる」
 駄目だ、止まれ。望月くんの表情が暗くなっていく。止まれ、と祈るのに、私の口は勝手に開く。