「俺、あんまり人を信用出来ないんだよね」
 これはまた意外な言葉だった。彼も人付き合いが好きではないらしいが、そこまで言うとは思わなかったから。
「どうして?」
「信用出来ない人が周りに多いんだ、すぐ秘密を話したり、陰で悪口言ったり、嘘コクも例に漏れず俺の周りでも流行ってたし。中学の時浮気されたし」
「浮気っ」
 中学と言えばまだ子どものイメージなのだが、彼の話はまるで大人の世界。驚いているとうんざりした顔を見せてきた。
「それも当時友達だった奴と。だからさすがに人間不信になったよ」
「でもまた……人を好きになれたんだ」
 望月くんは口元に笑みを浮かべ、上体を起こすと体育座りで、膝に頬を乗せて顔を覗き込んできた。子どもみたいな仕草が、話を聞いてほしそうに見えた。
「うん。実を言うと彼女はさ、初恋の相手でさ、元々小学生のときの同級生だったんだ。転校したんだけどこっちに戻ってきたみたいで。再会した時は驚いたけどちっとも変わってなくて、だからかな、どういう奴か知ってるから、無条件に……信用出来たし、好きになれた。……話が逸れたけど、誰も信用出来ないって薄暗い世界を生きてるみたいだから。だから、星村がそうじゃなくって、しかも友達まで出来たのが嬉しいんだ」
 へへ、と嬉しそうにはにかむものだから望月くん自身のことを話しているように聞こえる。私自身、そんなに大それたことではないから。
 でも、薄暗い世界か。それは今でもそうかもしれない……。
「星村は好きな人とかいるの?」
「ううん、いたことないかも」