文房具を新調するために電車に乗って市内に出た日、ショッピングモール内で私と同じくらいの歳の男の子たち数人とすれ違ったのだ。
「一声、女装似合いすぎだろ」
「実は女の子なの、うふん」
 ギャハハと笑い声が上がる。一声と呼ばれた男の子は身長が高くて、金髪のウィッグをつけ、花柄のワンピースに身を包んでいた。確かに一番似合っていたし、黙っていれば顔はいい。しかしそのノリに私は絶対関わりたくないと思ったのを覚えている。
 彼らがその姿のままゲームセンターへ入っていくのが見え、何となく後を追いかけるとプリント倶楽部のカーテンをくぐって中に入っていくのが見えた。
 何してるんだか、自分自身に呆れて文房具を買いに行ったのだが、一声という男の子のことが頭から離れなかった。何か目を引くものを感じたというか、単純に目立っていたからか……。
 まさか入学した高校で見かけるとは思わなかったし、見かけたその日に彼の夢へお邪魔する摩訶不思議な体験が起きるとは思わなかった。
「星村はさ、夏休み予定あるの?」
「今のところはないかな」
「ふうん、今のところ、ねえ」
「……何よ、気持ち悪い笑い方して」
「酷い」
 これは本当のことだ。ニヤニヤと笑みを浮かべる彼が悪い。睨み付けると、うう、と情けない声で返してきた。
「だって友達出来たんだろ、俺からしたら嬉しいんだよ」
「はあ、なんで? 望月くんが喜ぶ意味がわからない」
「うーん親心?」
「こんな親嫌なんだけど」
 言いながら、嫌かな、と考え直す。少なくとも私の両親よりは断然いいかもしれない。口には出さないが。