「それだけじゃない。格好のことも、言っちゃいけないことだった」
「……とりあえず、食べながら話そっか」
 言われて手を合わせたまま、いただきます、と呟いた。
 ここの食堂のラーメンはしょうゆラーメンなのだが、ペラペラのチャーシューが大好きでそれ目当てによく注文する。スープ自体は想像通りの味。おにぎりは私の大好物だと言っていいくらい、この食堂に限らず、メニューにあれば注文する。特に好きなのはご飯にベタっと貼り付いた海苔。湿った海苔と湿ったご飯が美味しくてたまらない。
 と、味を楽しんでいたが「ショートが似合わないのも分かってたんだ」と紬の言葉に本来の目的と向き直る。
「だって家族にも言われてたんだよ、私はロングの方がいいって」
「そうなんだ」
 まあ、確かに、中学の時の彼女はロングだった。そっちのイメージが強かったのもあるが、一度考えてから、口に出した。
「せっかく綺麗な髪だったから。……切ったの、勿体なくて」
 うん、そうだ。自分でもぴったりの言葉を言えたと思う。
 紬は驚いた表情をしたが自分の髪に触れ「憧れてたの、歩咲に」と呟いた。どういう意味か聞こうとしたが彼女に先を越される。