でも今日の夢は、きっとお互いがお互いを求めたからこそ生まれた奇跡。これを魔法と呼ばずして、何と呼ぶのだろう。
 でも、だからこそ、もう魔法は起きない。
 あの場所は壊れてしまって、あの場所を、もう求めることはないだろう。
 望月くんは私の手に触れると、真摯に見つめてきた。私も見つめ返す。
 煌めいて見える。ただのニットを着ているだけなのに、やけに華やかに映る。
「明日も来るよ。明後日も来る」
「……来れる時だけでいいよ」
「うん。……全く、そうだな」
 呆れて返す私に、望月くんも脱力したように頬を緩ませて、だから、と続けた。
「退院したら、いっぱい話をしよう。したかったことも、そうでもないことも、二人でやっていこう」
「そうだね。すごく素敵」
 目をつぶる。本音だった。胸が踊り、早く退院したい気持ちでいっぱいになる。同時に、これが恋か、と気持ちよくなった。この気持ちを恋と呼べなかったのは自信がなかったから。もう、呼べるようになったことがこんなにも心地よい。
 すると、両親と蒼菜が病室に入ってきた。三人は私の顔を見て、嬉しいような、安心したような顔で駆け寄ってきてくれた。
 それから謝罪をされた。これまでのこと、別居の件のこと。別居は見送ろうという話になった。父はともかく母は私のことを許せるのか問うと、蒼菜が「こんなことになって、お姉ちゃんが生まれた時のことを思い出したんだって」と教えてくれた。母は恥ずかしそうに蒼菜を窘めたあと続けた。
「あんたが生まれた時、この小さな愛しい子を守っていこうって決めたのにね、ぼろぼろのあんたの顔を見て、失うことが怖くなって、やっと思い出したの。この子の歩く未来が明るく咲き誇りますようにって願いを込めて名前を付けたんだよ。どうして忘れてたんだろうね……」
 母はそう言うと涙ぐんでいて、父はもう一度私に謝罪をしてくれた。