「私を望月くんの生活に入れて。望月くんの人生に混ざりたい。あなたが恋と認めてくれないならそれでもいい。でも、一人で生きられないなら、一緒に生きようよ」
 ああ、ずっと言いたかった言葉。彼の居場所に私がいなくてもいいなんて、本当はそんなこと思っていなかった。私がいたい。その場所に、いれてほしい。
 望月くんは、私から離れると潤んだ目で見つめ返してきた。グズグズと鼻を啜って、情けなく笑った。
「俺はほんと駄目だな……。こんなつもりじゃなかったんだ」
「うん」
「もっと、颯爽と、かっこよく……。君を失いたくないって伝えに来たはずなのに」
「そうなんだ」
 嬉しくて、笑みが零れてしまう。望月くんは指で涙を拭った。
「俺は弱いし、疑り深いとこもあって、子どもっぽいと思うし、重いんだ、まだ恋と呼ぶには、怖くて……それでも、いい?」
 おずおずと聞かれ、全く、とため息混じりに返した。その口元は自然と緩んだまま。
「いいに決まってんじゃん」
 望月くんも釣られて笑ってくれた。この顔が、私は大好きだ。
 徐々にもわもわとしていた空間がクリアになって、壁と床が浮かんでくる。私たちは辺りを見回してから、顔を見合わせた。
「一緒に帰ろう。星村」
「うん」
 彼の提案に私は頷いて、壁に手をかざした。
 すると亀裂が入り、いとも簡単に割れ、私たちの周りから、それから天井、床と崩れていく。私たちは手を繋いだ。
 たった一人の人として出会えたから特別なんだと思っていた。けれど、もうこの場所はなくたっていい。望月くんといられるなら、どこでだって。
 私たちの大切だった夢の場所の崩壊を見届けた。