「可愛い、守りたい。約束したい。僕は恋をしたらそう思うな」
「ふうん?」
「キラキラして見える。そんな男の子、いない?」
 問われて、いた、と即答できてしまう。なのに思い出せない。彼の言った気持ちも身に覚えがあるのに。誰だっけ。
 ズキリと、頭が痛んだ。押さえると「別のお話をしよっか」と提案される。ズキズキと痛む頭で、ゆっくりと頷いた。
「僕もね、大好きな友達がいるんだ。幼なじみなんだけど可愛い顔をして、偉そうなんだよ。けどいつも僕の前に立って、守ってくれるから、その子のおかげで友達も出来たんだよ。でもね」
 少年はつらつらと話し始めたあと、区切りをつけ、立ち上がった。
 しとしとと降り続ける雨を見上げ、続ける。
「僕のこと嫌いな子が多いんだ。みんな笑ってくれるから、盛り上げてみたんだけど、それがムカつくみたいで。その子たちのせいで、せっかく出来た友達も友達じゃなくなっちゃった。だからね」
 振り向いた少年の顔は痛ましい笑みを浮かべていた。私は胸が締め付けられる思いに駆られてしまう。
「誰かを好きになりたくないんだ。好きになると、いつも別れが来るから」
 彼の言葉は、私の中にもあるよく似た気持ちを思い出させた。だから、私も、と呟く。
「私も……。嫌われるの、怖いから……」
 少年は私に近付いてくると顔を覗き込んできて、優しく頬に手を添えてきた。同じだね。そう囁き、続ける。
「でもここなら嫌われることも、別れが来ることもないよ。だって僕しかいないから」
「……そうだね。すごく素敵」
 ずっと別れもなくて、嫌われることもなくて、一人じゃないのなら。こんなに居心地のいい場所があるのなら、それでいいのかもしれない。私は目をつぶった。
 本当に?
 誰かが、頭の中で問いかけてくる。