丸い目でジッと私を見つめてくる。
 何故だろう。この子と初めて会った気がしない。すると彼が小さな口を開けた。
「お姉ちゃんも?」
 どきりと、した。何を思っているのか分からなかった瞳は、見透かしているのだと気付いた。
 私は観念して頷いた。
「お姉ちゃんも」
「じゃあ僕たち一緒だ……」
 ふふ、と力無く笑う。私も同じように笑ってみせるが、ふと、目の端に何かが映る。
 視線をやると、公園の向こう、もわもわとしたグレーの空間が広がっている。そこに人がいた。その人は座り込んでいて、つい、誰だろう、と立ち上がって見に行こうとすると、少年が私の手を掴んだ。
「ここで、ずっと一緒にいようよ。迎えに来るまで」
「迎え? ……むかえか……」
 誰が、迎えに来てくれるんだっけ。
 再び腰をかけ、首を傾げた。満面の笑みを向けてきている。その笑顔を見ていると、そうだな、と納得出来た。私は頷いて彼の手を握り返した。
「ここでお話でもしてよっか。ちょうど、雨も降ってきたし」
 そう言うと嬉しそうに頷いてくれる。
 私たちはたくさんの話をした。学校でのこと、最近流行っている音楽や、テレビ番組、子どもならではの悩みや、私の年齢ならではの悩み。なんてものは思い付かないから、思わず、私の悩みを話していた。
「え、お姉ちゃん、恋が分からないのっ?」
「そんな大声で……。君はわかるの?」
「好き! これが恋じゃないの?」
 今の子はませているらしい、と思ったが、単純明快な答えはいかにも子どもらしくて、私は苦笑いを零した。
「でも、友達にも好きって思わない?」
「思うけどまた違うよ」
 つきは微笑んで、両手を胸に当てて目をつぶった。優しい気持ちがそこにはあるのだと伝わってくる。