あ、これは夢だ、と思った。見覚えのある公園にいたから。
けれど、私が今まで何をして、どうしてこの公園を、あの公園だ、と思ったのかは分からない。ブランコ、滑り台、砂場と屋根のついたベンチがあるだけの小さな公園。見覚えがあるようで、てんで馴染みもないような変な感じ。
不意に腰に衝撃があった。見ると、小さな男の子が私の腰に腕を回している。見たところ小学一、二年生だろうか。少年は私を見上げると、ひ、と悲鳴を上げて離れた。なかなか失礼な子だ。
小刻みに震え、じわりじわりと後ずさる。その姿は今にでも熊に飛びかかられそうな怯えぶり。私はため息をついた。
「あのね、君がぶつかってきたんだからね。私がぶつかったって勘違いしてる?」
「ご、ご、ごめんなさ……」
泣き出しそうな顔が更に崩れそうで慌ててしまう。
「あーごめんごめん、私が悪かった。えっと……」
慎重に考えながら、出来るだけゆっくりと屈み、少年と同じ目線になってみる。大きな目が私を映し出し、マッシュルームカットの頭のせいで女の子に見えなくもない。
「私は歩咲。君の名前は?」
「……つき」
「つきか、お詫びと言っちゃなんだけど、お姉ちゃんと遊ぼっか」
「いいの?」
「うん、いいよ。君の好きな遊びをしよう」
さっきまで怯えていたのに私の提案に、わあい、と両手を上げた。ひとまず胸を撫で下ろす。子どもは素直だな、と微笑ましくなった。
つきの言うままに、ブランコを押してあげたり、滑り台を一緒に滑って、泥団子を作ってぶつけ合って、ベンチで彼の知る歌を歌った。一通り遊んだだろうが、つきは疲れ知らずで次は追いかけっこをしようと走り出した。
ところが転んでしまう。慌てて駆け寄ると大声で泣き始めた。膝を擦りむいたらしく、私はつい、ため息をついてしまう。
すると、つきは泣くのをやめたかと思うと私を凝視し、無理やり笑顔を向けた。
「え、えへ、僕……いい子だから……。怒らないで」
その豹変ぶりに、驚きを隠せない。それまで泣いていたのに、無理やり作った笑顔が次第に自然になっていく。
けれど、私が今まで何をして、どうしてこの公園を、あの公園だ、と思ったのかは分からない。ブランコ、滑り台、砂場と屋根のついたベンチがあるだけの小さな公園。見覚えがあるようで、てんで馴染みもないような変な感じ。
不意に腰に衝撃があった。見ると、小さな男の子が私の腰に腕を回している。見たところ小学一、二年生だろうか。少年は私を見上げると、ひ、と悲鳴を上げて離れた。なかなか失礼な子だ。
小刻みに震え、じわりじわりと後ずさる。その姿は今にでも熊に飛びかかられそうな怯えぶり。私はため息をついた。
「あのね、君がぶつかってきたんだからね。私がぶつかったって勘違いしてる?」
「ご、ご、ごめんなさ……」
泣き出しそうな顔が更に崩れそうで慌ててしまう。
「あーごめんごめん、私が悪かった。えっと……」
慎重に考えながら、出来るだけゆっくりと屈み、少年と同じ目線になってみる。大きな目が私を映し出し、マッシュルームカットの頭のせいで女の子に見えなくもない。
「私は歩咲。君の名前は?」
「……つき」
「つきか、お詫びと言っちゃなんだけど、お姉ちゃんと遊ぼっか」
「いいの?」
「うん、いいよ。君の好きな遊びをしよう」
さっきまで怯えていたのに私の提案に、わあい、と両手を上げた。ひとまず胸を撫で下ろす。子どもは素直だな、と微笑ましくなった。
つきの言うままに、ブランコを押してあげたり、滑り台を一緒に滑って、泥団子を作ってぶつけ合って、ベンチで彼の知る歌を歌った。一通り遊んだだろうが、つきは疲れ知らずで次は追いかけっこをしようと走り出した。
ところが転んでしまう。慌てて駆け寄ると大声で泣き始めた。膝を擦りむいたらしく、私はつい、ため息をついてしまう。
すると、つきは泣くのをやめたかと思うと私を凝視し、無理やり笑顔を向けた。
「え、えへ、僕……いい子だから……。怒らないで」
その豹変ぶりに、驚きを隠せない。それまで泣いていたのに、無理やり作った笑顔が次第に自然になっていく。