「うん、星村は暴言を吐くことじゃなくて、強い言葉を使う度に、跳ね返ってくる痛みに快感を覚えてるんだよ。他人にも、自分のためにも優しい言葉を使わなきゃ」
「……でも、そんなの」
 私にはできない。首を横に振るが、体勢を立て直して向かい合った。
「星村はさ、うっかりトゲトゲした言葉を出しちゃうんじゃなくて、それしか知らないんだよ」
 ちょっと引っかかる言葉に少し考えたあと、つい睨んだ。
「……馬鹿にされてる?」
「いやいや。だからさっきみたいに考えてから言い換えればいい」
「さっきって……」
 何だっけ、と言い終わる前に思い出した。そういえば私、彼にそこにいるだけでいいって何とも恥ずかしい言葉を口にしたのだ。まるで告白みたいに……。自覚すると恥ずかしくなった。
「いやあれはそういうのじゃなくて」
 そもそもそういう感情を、望月くんには抱いていない。確かに顔はいいが気弱で優柔不断、ホラー番組にビビり倒す姿なんて情けない。
「分かってるよ、大丈夫。それに俺は星村のはっきりした態度、凄いと思ってる。短所でもあるんだろうけど、長所だよ」
 うんうん頷いて断言してくれる望月くんの方こそ、凄いのに。
 彼を気弱で優柔不断なんて言ったが、言い換えれば……優しい人だ。色んな選択肢を考え、例えば色んな言葉を考えて、その人に合った言葉で伝えてくれているのがわかる。
「それに傷付けたことを気にしてるってことは少なくとも謝りたいってことだよね?」
「……うん」