翌日、花乃子といつものように登校をして、明日はクリスマスだねえ、と軽く話をして、学校へ向かう。教室内も冬休みとクリスマスを目前にして浮き足立っていて、遊びに誘われたり、紬からまたお泊まりの提案をされたりして、終業式を終える。
 紬から一緒に帰ろうと誘われるが、私はそれを断って、生徒たちが帰るのを、階段に腰掛けて眺めていた。
 今の私は、青春の真っ只中。私の生活の背景に青春がある。
 でも、そこに、望月くんはいない。
 望月くんは、私の憧れだった。初めて見た時、学校で彼を見かけた時、酷く惹かれた。その輝きに焦がれた。私もあの中にいたい。話をしてみたい。彼と青春を、謳歌したい。そう強く思った。
 でも、強く思えば思うほど、私には無理だと悟ってしまう。それが出来ていたのなら、あんなことにはならなかったと、絶望を繰り返した。罪はいつも後ろにいて、その時も私を酷く糾弾した。
 生徒がいなくなると、私は階段を駆け上がった。一番上の階は屋上に出られないよう、柵を設けられている。けれど登ろうと思えば全然登れて、更に扉には鍵がされていたのだが、誰かが壊したのか、簡単に開くことが出来た。
 屋上に出ると、冷気を含んだ風が駆け抜けていった。寒い。屋上を囲う柵に近付いてグラウンドに視線を落とす。今日からは部活もないから、ガランと寂しげにそこにあるだけ。頬杖をついて、そのまま眺める。
 いつだって、望月くんのことを考えていた。友達と笑い合う時、食堂にいる時や、授業を受けている時。私は笑っているのに、青春を謳歌しているのに、いつも寂しかった。
 本当は、この気持ちの正体にも気付いている。見ないふりをすることで私の中で綺麗に残しておきたかった。
 魔法は、解けた。
 私は、もう一人じゃない。
 けれど、一番傍にいて欲しい人と、どうやって関係を始めたらいいのか分からない。いつも、気付いた時には始まっていたから……。