それでも、私の気持ちはまだ答えを見つけられずに、ただ望月くんとあの場所を求めている。
 そんな日々を送っていると、たまたま屋詰さんと玄関先で会った。終業式も前日に迫った日のこと。
「久しぶりだな」
「ですね」
 二人で校舎を出る。空を仰ぐと曇り空で、雪が舞っている。今日も冷えるな、と自分を両腕で抱きしめると彼の視線が手首に向けられた。そこにあるのは、ブレスレット。
「これ……望月くんから、貰ったんです」
「うん、だろうな。あいつが石を選んで、作ってたの見てたから」
「そうなんですか?」
「て言っても、わりと即決で決めてたよ。よく似合いそうだろって言われたからさ、あの子、そんな明るいイメージあったっけって冷やかしてやった」
「相変わらず無礼な人ですね」
 思わず睨みつける。屋詰さんはくすくすと笑って続けた。
「悪い。そしたらさ、あいつ、星村は俺にとって太陽みたいだからって臭いこと言ったんだ」
「太陽? ……大袈裟な」
 悪態をついたが、顔が熱くなるのを感じて、マフラーで口を隠した。にやけてしまいそうだったから、せめてそれだけは隠したかった。
「歩咲ちゃんさ」
 屋詰さんは立ち止まると、私を呼んだ。私も立ち止まって振り向く。いつもの無礼なことを言う雰囲気はなく、ただ真っ直ぐに私を見つめてくる。まるで年上らしく。
「もう、夢で会わなくなったんだってね」
「はい」
「俺、花乃子とさ、その現象について考えてたんだよ。何で二人が夢で会い、そして会えなくなったのか……。会うようになった理由は分からないけど、会えなくなった理由は、君が孤独じゃなくなったからだと思う」
「孤独じゃなくなったから?」
「うん。いっせから聞いたけど充実してるんだろ。青春を謳歌してるようじゃないか」
「別に。そんな……」
「いや、俺も文化祭の時に君を見て、こんなに明るい顔してたっけって思ったよ」