天井が視界に入り、夢から覚めたのだと突きつけられる。本当に突然だった。前触れも何もなかったのだから。
 上体を起こし、机の上に置いたブレスレットに視線を向ける。せめて持ってて欲しいんだ……。彼の言葉が蘇り、ベッドから這い出ると、私はそれを腕につけてみた。
 改めて見るとフレッシュな黄色と、鮮やかオレンジ色をしている。まるで太陽をイメージしたような、そんなブレスレット。こんなの私には身に余る代物だ。けれど外す気にはなれず、そのまま登校することにした。不思議と口角が緩む、そんな思いで。
 その日の夜、打ち上げを楽しんできたことを望月くんに話そうと眠った。
 それなのに、本当に夢を見なかった。望月くんに会わなかった。私はただ普通の夢を見て、翌朝、目を覚ました。
 会わなかったことにも驚いたが、普通の夢を見たのも久しぶりで、そっちに驚いてしまう。まるで、あの夢の場所が終わったかのような……。
 血の気が引いていく。でも、以前より取り乱すことはなかった。ブレスレットに触れる。これがあるからだろうか……。望月くんの言葉を思い出した。
 彼が言うように、私も心強さを感じる。一人じゃない。会えなくても、これをくれた人はこの世にいる。
 それは、苦しさを伴う支えを感じた。ようやく分かった。望月くんの言っていた気持ち。
 それに、望月くんは、夢の終わりが来ることを分かっていたのだ。その上で私にブレスレットを渡してくれた。現実で関わりのない私たちの、唯一の繋がりとして。
 ブレスレットの上に、雫が落ちる。落とす場所を指で触れると、初めて泣いているのだと気付いた。
「これで、終わりってこと?」
 私、泣いてる。涙がぽろぽろと溢れて止まらない。胸が苦しい。苦しいのに、心に宿った力強さが、私に前を向かせようとする。あれは所詮夢だった、望月くんが同じように心強さを感じてくれるように、現実で頑張って生きようと思わせてくる。
 それでいい。そんな風に望月くんが笑うのも、想像出来てしまった。