今思えば、思うままに人を動かせたから王様のような気分でいたのだ。最後までどこか人助けの気持ちもやっぱりあった。そうなるまで、私のしでかしたことが最低なことだとは気付けなかった。
 それからは自己嫌悪の日々。最低なことをみんなに言ってしまった、という自覚に毎日押しつぶされそうになって、家での孤独感も相まって、疲れてしまった。
 唯一かつてターゲットだった彼女からは感謝されたが、私の気持ちは晴れなかった。
 本当に、誇れた話じゃない。
 この全貌を望月くんに話すと、途端に恐怖に襲われる。だから私は彼からそっぽを向いた。
「これが全て。今日、クラスメイトたちは庇ってくれたけどとても自慢げに話せたもんじゃない。……最低だって言われる覚悟は出来てる。それでも、今の私はあんな最低なことを、もうしない。私はあの頃とは違う自分に変われたことを自慢に思う」
 望月くんは何も言わない。そのせいで、鼓動が激しく鳴る。怖い。どうしよう。身体が震えてきてしまう。
 でも、私は今の自分が好きだ。変わった自分が好きだ。
 彼の口が動く気配がする。私は身構えた。
「……そうだな、俺から見ても、星村はいい方に変わったよ」
 思わず彼の方を向くと微笑んでくれていた。その笑みは糾弾するものではなくて、安心した。
「最低って言わないの?」
「まあ、やりすぎたとは思うし、恨まれても仕方ないとは思うけど。大丈夫。星村はそれが最低なことだってわかったんだ。だから、今の星村がいるんだろ。それでも罪の意識を感じるなら、ずっと感じ続けること、忘れないことが、星村に出来る唯一の償いだと俺は思うよ」
 そう言ってはにかむ。
 忘れないこと。心の内で反芻してみた。