「だ、大丈夫? 星村、星村ー」
「放っといて。……ああ、違う、えっと……何て言えば……そこに、いるだけでいいから」
 ぐちゃぐちゃになった頭で一生懸命考えて絞り出した言葉は、まさに今の私がしてほしいこと。ぴったりの言葉を吐けて、安心する。
 背中にじわりと感触があった。僅かな重みが望月くんの背中だとわかるのに時間はかからなかった。
 しばらくそうしていた。背中合わせに人の感触を感じているせいか、泣くことを今までしてこなかったからか、体感ではすぐに泣き止んだ。泣き止んだ後も望月くんはそうしてくれていて、私も体重を預けてみる。
「知り合いと……喧嘩したの。喧嘩っていうか、一方的に傷付けた」
「前言ってた、真似してくるっていう?」
 こくりと頷く。彼には見えないだろうが。
「私ね、最低な人間なの。人を傷付けることに一度快感を覚えてしまってから、息を吐くように暴言が出てくるようになった。どう言えば相手が傷付くか分かる、むしろ傷付けようとしてるみたいに私の口が動くの」
「た、確かに……身に覚えがある」
「……うん」
 嫌味だろうか。声音にはからかう感じが滲んでいたが、反論したいのをグッと堪える。事実だ。
 何も返さない私を見かね、背中に更に重みが加わる。本当に重いから抗議してやろうと振り向くと、望月くんも振り向いた。
「まあそう自分をあまり虐めないようにな」
「え?」
「人を殴ったら痛みは跳ね返ってくるもんだよ。今の星村みたいに」
「わ、私が? 傷付いてるって?」