まずは、おかっぱ頭のカッパちゃん。そう名付けた。それからみんなで無視をするように仕向けた。次第にその空気は彼女たちをいじめのターゲットへと働きかけた。家にも嫌がらせをし、教室内でも嫌味を言い続けた。
「虐めて自分が優位に立ってるとでも思ってた? 下の下の人間なのにねえ、人間でもないか、人間以下。これはね、あなたたちの罰なんだよ、人間以下を人間にするための罰。いわば洗礼。生まれ変わりたいでしょ?」
「何か臭いと思ったら発生源あんたじゃん。ねえ、みんな、消臭しなきゃね?」
「万引きさせてたんでしょ? 証拠の写真あるからこればらまいちゃおっかなあ。あ、彼女のことはご心配なく。親にも店の人にも正直に謝って許してもらえてるから。それよりあんたたちだよねえ、こーんなことして、ふふ、一番近くで見てたから証拠の写真も動画もあるんだよ、流出させちゃおっかなあ」
 虐めの空気は加速していった。私は、やはり最低な人間で、人助けをしている気分に浸っていたのだ。
 その空気がいつしか破綻する。クラスメイトたちは、私のノリについてこれなくなった。
 当たり前だった。ほとんどの人間は、他人のことなんてどうでもいい。更に私の言葉は彼女たちに留まらず、クラスメイトたちにも厳しい言葉を投げかけるようになる。
「え、その髪飾り似合ってないよ。馬鹿でかいリボンのせいで馬鹿に見える」
「あの番組やらせ感凄いよねえ、え? 面白いからいいじゃないかって? やらせかやらせじゃないか分からないからそんなこと言うんでしょ、真実の目を持たなきゃ」
「点数ひっく! こんなんじゃ高校行けないよ!」
 自分を棚に上げて人を下げて笑いを取る。私はそんな人間に成り下がっていた。
 卒業する頃には、私は一人になっていた。元々のグループの子達からは「歩咲といると最低になる」と見放されてしまう。ちょうど、望月くんと夢で見たあの時の夕焼けに似た真っ赤な教室の中で。