ターゲットの子はいつも髪の毛はボサボサで、服も皺が寄って汚れていた。肌もくすんで見えて、一言で言えばみすぼらしい女の子。そういう家庭の子なのだろうと思っていた。
 虐めを見かけたのは本当に偶然だった。帰宅途中に立ち寄ったコンビニで、彼女がお菓子を鞄に入れたのを見つけた。驚いて声もかけられずにその後を追うと、山田たちが彼女を出迎え、意地悪な笑みを浮かべ、叩いたり、押したりしてからかっているのを見てしまう。
 虐めだ。
 一目で分かるくらい、中心にいる彼女は怯えきっていた。
 私は尾行し、集団が解散して彼女が一人になったところで近寄った。最初は渋っていたが、目に物見せてやろうと提案すると虐めの全貌を話してくれる。
 最初は、仲良かったそうだ。けれど、空気が読めないから、とか、叩くと面白い反応をするから、という理由で中学一年から三年の時までずっと虐められ続けたと吐露してくれた。
 とりあえず彼女にはしばらくそのままでいて欲しいとお願いした。私に考えがあるから、と。絶対に失敗しない、そして立場を逆転させてやる。そんな約束をした。
 私には、実績があったから。母という実績が。
「友達になってから、私も同じようにターゲットの子を虐めた。ただ、私たちは裏で繋がっていたから、彼女たちの信用を得るためだってターゲットの子も知ってた。更にクラス全員と仲良くなって根回しをした。それでね、ようやく信用を得られたって確証ができた日に、私はあの子たちをみんなの前で酷く傷付けた。傷付けるのは、簡単だった」
 まずは彼女たちの虐めを暴露してやった。クラス全員の刺す視線を受け、青ざめていた。裏切った私を睨みつけ、私も同じことをしていた、と糾弾される。
 けれどそこは作戦通り。私とターゲットの子は繋がっていたし、実は直接的にあの子を虐めることはしなかった。ただ傍で笑っていただけ。あの子はそれだけでも嫌だっただろうが、許してくれた。
 私が彼女たちを地獄へ追い込んだから。