私たちは一通り遊んだ。スーパーボールすくいや、射的、カラオケ大会とか、展示を見たり、食べたいものを食べ尽くして、遊び尽くしてキャンプファイヤーの前で一息ついた。
 不思議と、灯火に照らされた横顔が美しく見える。触れてみたい、と思えてしまうほどに。楽しくて、嬉しくて、浮かれた一日の終わりに、穏やかな感情に包まれる。望月くんが、綺麗だから。
 クラスで眺めていた気持ちとはまた違う感情に身を任せてみた。
「何?」
 触れた頬には温もりがない。振り向いた顔が、いつもよりも儚く見える。望月くんってもっと逞しい顔してたんじゃなかったっけ。逃げていきそうな、火に溶けてしまいそうな、危うさを滲ませている。
「何もない。楽しかったね、文化祭」
 引っ込めた手で彼の服の袖を掴む。望月くんは、ああ、と微笑んだ。
「本当に楽しかった。来年も期待だな。……そうだ、星村、あいつに言ってくれたんだってな」
「あいつ?」
「元カノ」
 ああ……。呻き声にも似たような声を出してしまう。それほどまでに、嫌な気持ちをあの時抱いたから。
「その場にいた奴から聞いたんだ。俺のためにすげえ啖呵切った子がいたって。ありがとう」
「……いや、別に。その場にいる人みんなが気分悪くなるようなこと言ってたんだよ」
「それでも言ってくれたのは星村だけだろ。星村は、かっこいいよ」
 私は頭を振った。かっこよくなんかない。私なんか、最低な人間なのだ。
 望月くんは後ろ手を地面につけると、力なく、あいつみたいな奴結構いるんだ、と告白した。
「あいつみたいなって……」
「俺を、犬とか、アクセサリーみたいに思ってる奴。連れ歩くと自分をよく見せられるって思い込んでるんだ。その人はその人なのにな……。女の子だけじゃない、男も。例えば、ナンパするために連れていく、とかな」
 彼の言葉に誘導され、つい海の日で会った時のことを思い出す。あの時見せていた顔とは違って、どこかやさぐれたような、拗ねたような表情。私は首を傾げた。