だから私は手の下に手を広げた。
 そしてブレスレットが落とされる。黄色とオレンジのガラス石で作られたそれに、意味がわからずに固まっていると手は引っ込んで行った。
「こ、これ」
 問いかけようとした時、後ろから声が聞こえた。私の次に入った人が追いついてきたのだ、急いで教室の外に出た。
 眩い光に目を細めてしまう。突如、重みがぶつかってきた。
「歩咲い……。怖かったあ」
 情けなくわあわあと泣く紬だった。温もりに安堵しながら、私も彼女の背中に手を回して、ブレスレットを眺めた。
 落ち着いた頃、二人で二年生の廊下を渡り歩く。望月くんのクラスも良かったが、占い、巨大ジェンガ等バラエティに営んでいる。
 面白いのが、焼きそば屋と焼きうどん屋が並んでいたところ。悩んだが焼しうどんを食べることにし、教室の中に入り、席について、注文して待っていると、目の端に、望月くんの元彼女の姿が映る。友達と来ているようで話が盛り上がっている。
 仲良さそうだったんだけどな。あの人、浮気したんだ……。
 つい冷めた目を向けていると、いっせい、と彼女が言ったのが聞こえた。思わず聞き耳を立ててしまう。
「文化祭なんて特に一声を連れ歩くには気持ち良さそうなんだけどなあ」
「酷いこと言う! 浮気したくせに」
「まあねえ、だってあいつ実は女々しいっていうか、記念日とか細かいし、結構疑ってくるし、ノリとかもさ、子どもっぽくない?」
「あー、わかる。ほんと、顔だけだよねえ。うちのクラスでは太郎くんの方が人気だよね、みんな知らないんだろうなあ」
「ね。あの男、顔が悪かったらどうなってたかって考えるとウキウキしちゃう、きっと酷い虐められ方してたんだろうなあ」
 徐々に聞こえてくる声が大きくなってくる。視界も動いていて、気付いたら、彼女たちを見下ろしていた。