私は目をつぶった。
 この距離が、この位置関係が、私たちの学校での位置だと頭の中に刷り込ませた。
 それからトントン拍子に文化祭の準備は進んだ。それと連動して私もクラスに馴染むようになっていく。
 その中でも神崎さんが面倒見よく私に接してくれるからクラスでは一番仲良くさせてもらえている。もちろん、私がそうなだけで、彼女には別に親友がいる。そのことに不満はないが、少し寂しさを覚えてしまう。
 そんな時、紬が私のクラスへ来てくれると安心出来た。別の村から来てくれた旅人に、この村で起きている問題をつい話してしまうような、そんな気楽さに包まれる。
 そうすると、私は必ずと言っていいほど蒼菜の言葉を思い出した。
 世界が広がった感じがする……。
 これがそうなのかはまだ分からないけれど、生きている世界が教室の中だけじゃないとうっすら分かってきた。
 やがて当日の朝、私たちクラスは早くから学校に集まり、仕込みを始め、文化祭が始まりを迎える。
 いつの間にかおにぎり大好きな私が指揮を執った方がいい、という話になり、張り切って指示を出した。調理班、提供班、片付け班、それからテイクアウト班と別れ、更にシフト制にしてお店を回す。
 私は全体を見れるようにと提供班に属し、間に合わなさそうなら他の班の助けにも行く。思ったより店は繁盛し、お客さんが途絶えることはなく、テイクアウトの方も注文を受けるものだから慌ただしく店を回す。この調子ならと順調に思えたその時だった。