すると空間が徐々に色を変え、夜空へ変わる。上も右も左も下も、夜空に。星々が呼吸をするように瞬き、暗くなった視界でも微かに光に照らされる私たちの身体。
 最近、この空間が夢の途中から形を変えることが多くなった。以前は初めから教室や体育館だったのに。しかも決まって、こんな風に一面夜空になる。
 そんな時、望月くんはどこか暗い顔をしているような気がする。まるで彼の顔を隠すように暗くなるものだから、顔をよくよく見なきゃ表情が読み取れない。
「綺麗だね」
「うん。俺、夜空が好きなんだ。……落ち着く」
 笑っている気配がして、ジッと見つめると確かに口元が綻んでいる。望月くんも私に習うように見つめ返してきた。
「私は……夜が嫌い」
「へえ、そうなの? 何で?」
「夜になると……家族が集まるから。朝には学校へ行けるから、朝の方が好きだったな」
 食卓を囲んだり、ソファーに座ってテレビを見たり、リビングでそれぞれ別のことをしたり……。そんな家族の団欒が行われる夜が嫌いだった。
 けれど、自室に籠るのはもっと嫌で居続けた。そんなことをしたら本当にこの家族にとって、私はいらない存在なんだと思い知らされてしまう。
 昔の私はよく頑張っていたな、と思う。
「でも今は好き。ここに来れるから」
 自然と口元が綻ぶ。望月くんはそれには答えずに、いきなり走り始めると少し離れたところで振り向いた。
 そんなところにいられたら、全然顔が見えない。
「文化祭さ、星村のクラスに行くよ」
「え、でも」
「大丈夫、全然知らない人がいるクラスの出し物を見に行くくらい、あるだろ? だからさ、星村も来てよ。お化け屋敷」
「……仕方ないなあ」
 やれやれとわざと肩を竦めてみせると、笑い声が届けられる。
 けれどやはり顔が見えない。こんな状況が、保健室で少し話をした日のことを思い出させた。あの時も、カーテンに仕切られて顔が見えなかった。