「タロちんと花乃子ちゃんが付き合ったって話。俺、星村に聞くまで知らなかったんだけど」
「ああ……そうだそうだ」
 私だって昨日の朝知った。付き合って一週間なの、とまるで世間話でもするかのようにあっけらかんと言っていた。びっくりしたが本人の中で気持ちが落ち着いてから話そうと思ってくれたらしい。
「タロちん薄情じゃない? 言ってくれてもいいのに。……まあ、毎回教えてくれないんだけど。勝手に付き合って勝手に別れてるのがタロちんだし」
「毎回なら別にいいじゃん」
「いや、そうなんだけど、一応星村を紹介した身としては……」
「どっちもそう思ってないから」
 ええ、と大袈裟に驚いている。これは本当だ。屋詰さんから直接聞いた訳じゃないが、彼に私とそのつもりはないだろうし、私も彼と恋愛する気はない。
「そっかあ……。まあ、花乃子ちゃんとはそうなりそうな気してたしな。星村は好きなタイプとかないの?」
 窓の外に視線を送ると、一応グラウンドが広がり、夕焼けが伸びている。外に出られないのに外があるのは変なもので、でも錯覚してしまう。ここは現実で、私たちが同学年で、教室に残って喋っている放課後だと。
「好きなタイプか、やっぱり分からないな」
「ちっとも?」
「ちっとも。……恋なんか、出来そうにないし」
 呟いてみると、しっくり来た。望月くんのことは好き。でも、これは恋じゃない。私なんかが恋をして、青春を謳歌していい訳がない。母を殺し、そして……。
 ああ、この夕焼け、あの日に似てる。
 中学時代のことを思い出すと、よりそう思える。陰鬱な気持ちが湧き上がってきた。すると、手に感触があった。望月くんが手を重ねていた。
「恋しなくてもさ、誰か、頼れる人を作って」
「何急に」