絶望感で、目の前が暗くなる。大切だったものが、学んで得たものが、貰ったものが、落ちていくような感覚に陥る。
 世界は歩咲を嫌ってない? そんなこと、ない。
 世界は、私を、殺そうとしてる……。
 気付くと部屋の中にいて、ベッドに潜り込んでいた。走って階段を駆け上がったらしい足が震えている。足だけじゃない、手も、身体も……。
 強く目を瞑り、自分の身体を抱き締めるように腕をクロスした。
 眠れ。眠れ。早く寝ろ。私。ここではないあの場所に行こう。早く……。
 目を覚ますと、グレーの空間が広がっていて、思わず望月くんの姿を探した。望月くんはどこからともなく現れると私を抱きしめ、私も彼を抱きしめた。
 温もりはない。なのに酷く落ち着く。悲しかった気持ちや絶望感が消え失せ、落としてしまったものがここにあったと錯覚してしまうほどにこの身体も、この存在も大切に思えた。
「望月くん」
「星村……。会えてよかった。いなくなったんじゃないかって」
 彼の腕を押して見上げると整った顔がそこにはあった。
「私も……。怖くなっちゃった。私の居場所は、ここなのに」
 彼が笑みを浮かべる。ああ、好きだ、と思った。前よりも、もっと。
 しばらく私たちはそうして、突然兄と妹のような気まずさに見舞われて離れ、修学旅行の話でもすることにした。
 しかし話しながらもあまり楽しくなかったのが窺える。理由を問うとここに来れなかったから気が気じゃなかったと口にした。