【何、無茶なこと言ってんの!?】
奏翔の家に案内してもらいながら、彼が招待してくれた吹奏楽部のグループトークで、未弦に定期演奏会に出ることを伝えると、彼女は予想通り驚いていた。
【譜久原くんがソロで弾く予定だった曲の追加はいいとして、定期演奏会だから飛び入り出演でもまあ、許されるけど……耳が治ってからって言ってなかったっけ?】
未弦のメッセージはさらに問い詰めるような内容だ。確かに彼女の言う通り、無理をしているかもしれない。以前、ぴったりな楽器だと言ってフルートを勧められたこともあったけれど、それはまた別の問題だ。
【私が一緒に弾くって決めたの。だから、やるの】
【いいけど、無理はしないでよ。中止になるよりはずっとましだから】
私が強く言い返すと、未弦はため息をついたような返信をよこした。
【入部届、出さなきゃダメなんだけどぉ、あたしが勝手に書いて出しといてあげたからぁ!】
そのタイミングで、三羽先輩からのメッセージが飛び込んできた。未弦に聞くと、泉平くんや弓彩と一緒に帰っているらしい。さすが部長、行動が素早い。
【曲多いから、容赦しねぇからな】
次に泉平くんからのメッセージが割り込んできた。顔は見えないけれど、いじわるそうに口角を上げている姿が容易に想像できる。厳しい指摘が飛んでくるかもしれないと思うと、少し気が重くなった。
【俺が一緒に弾くんだから、俺が教える】
隣でスマホを操作していた奏翔が、きっぱりとした調子でメッセージを打ち込んでいた。琥珀色の瞳が、画面越しに泉平くんを睨んでいるようだ。
【へー、練習サボってたのに、楽譜覚えてんのか?】
泉平くんは挑発するように奏翔に話の矛先を向けた。顔は見えないが、挑戦的に微笑んでいるのがわかる。
【ああ。部屋にこもってたけど、見たら思い出せるし、体が覚えてるから弾けるよ。まだ辛いけど、楓音が隣にいるし、少しずつ気力は取り戻してる】
奏翔は堂々と答えた。私は初心者なのに、こんなに頼りにされているのが少し気恥ずかしい。
【すっかりカップルっぽくなってんな。羨ましー】
泉平くんが、少し寂しげに呟く。
【いやぁ〜、あたしらだってカップルじゃん。駅ついたから一旦抜けるね】
【萌響送ってくるから、また後でな】
三羽先輩がすかさず突っ込んだ。どうやら、彼らの道は分かれたようだ。
【お姉ちゃん、バイオリンしまってる時に弦が切れたー】
グループトークに残った未弦と弓彩のやり取りが始まる。弓彩が打ち込んだメッセージに、私は少し不思議に思った。隣にいるはずなのに、どうして文字で伝えているのだろう?きっと、直接言うのは恥ずかしかったのかもしれない。
【え、今!?】
未弦は驚いたような返信を送っていた。
【冗談だよー】
【もう、一瞬焦ったじゃん】
画面越しに弓彩がクスクスと笑っている様子が伝わり、未弦はどこか拍子抜けしたように肩をすくめていそうだ。明日が本番だというのに、こんな風に驚かせるなんて、まったく人騒がせな子だと思う。
けれど、その点では私も同じだ。飛び入り出演が決まっている以上、緊張と不安が入り混じっている。でも、今は奏翔が隣にいてくれる。それが私の支えになっているのだ。
奏翔の家に案内してもらいながら、彼が招待してくれた吹奏楽部のグループトークで、未弦に定期演奏会に出ることを伝えると、彼女は予想通り驚いていた。
【譜久原くんがソロで弾く予定だった曲の追加はいいとして、定期演奏会だから飛び入り出演でもまあ、許されるけど……耳が治ってからって言ってなかったっけ?】
未弦のメッセージはさらに問い詰めるような内容だ。確かに彼女の言う通り、無理をしているかもしれない。以前、ぴったりな楽器だと言ってフルートを勧められたこともあったけれど、それはまた別の問題だ。
【私が一緒に弾くって決めたの。だから、やるの】
【いいけど、無理はしないでよ。中止になるよりはずっとましだから】
私が強く言い返すと、未弦はため息をついたような返信をよこした。
【入部届、出さなきゃダメなんだけどぉ、あたしが勝手に書いて出しといてあげたからぁ!】
そのタイミングで、三羽先輩からのメッセージが飛び込んできた。未弦に聞くと、泉平くんや弓彩と一緒に帰っているらしい。さすが部長、行動が素早い。
【曲多いから、容赦しねぇからな】
次に泉平くんからのメッセージが割り込んできた。顔は見えないけれど、いじわるそうに口角を上げている姿が容易に想像できる。厳しい指摘が飛んでくるかもしれないと思うと、少し気が重くなった。
【俺が一緒に弾くんだから、俺が教える】
隣でスマホを操作していた奏翔が、きっぱりとした調子でメッセージを打ち込んでいた。琥珀色の瞳が、画面越しに泉平くんを睨んでいるようだ。
【へー、練習サボってたのに、楽譜覚えてんのか?】
泉平くんは挑発するように奏翔に話の矛先を向けた。顔は見えないが、挑戦的に微笑んでいるのがわかる。
【ああ。部屋にこもってたけど、見たら思い出せるし、体が覚えてるから弾けるよ。まだ辛いけど、楓音が隣にいるし、少しずつ気力は取り戻してる】
奏翔は堂々と答えた。私は初心者なのに、こんなに頼りにされているのが少し気恥ずかしい。
【すっかりカップルっぽくなってんな。羨ましー】
泉平くんが、少し寂しげに呟く。
【いやぁ〜、あたしらだってカップルじゃん。駅ついたから一旦抜けるね】
【萌響送ってくるから、また後でな】
三羽先輩がすかさず突っ込んだ。どうやら、彼らの道は分かれたようだ。
【お姉ちゃん、バイオリンしまってる時に弦が切れたー】
グループトークに残った未弦と弓彩のやり取りが始まる。弓彩が打ち込んだメッセージに、私は少し不思議に思った。隣にいるはずなのに、どうして文字で伝えているのだろう?きっと、直接言うのは恥ずかしかったのかもしれない。
【え、今!?】
未弦は驚いたような返信を送っていた。
【冗談だよー】
【もう、一瞬焦ったじゃん】
画面越しに弓彩がクスクスと笑っている様子が伝わり、未弦はどこか拍子抜けしたように肩をすくめていそうだ。明日が本番だというのに、こんな風に驚かせるなんて、まったく人騒がせな子だと思う。
けれど、その点では私も同じだ。飛び入り出演が決まっている以上、緊張と不安が入り混じっている。でも、今は奏翔が隣にいてくれる。それが私の支えになっているのだ。