泉平くんとの曲作りは順調に進んだ。彼は昼の授業をサボってまで私の隣で作業し、三羽先輩と未弦が教室に戻っても、泉平くんは真剣そのものだった。放課後には音楽室に移動し、ピアノを弾きながら楽譜を修正していった。
私がぎこちなくメロディーを弾くと、彼は容赦なく「下手だ」とか「譜面通りになってない」と鬼のように指摘してきて、メンタルが壊れそうになった。彼には完璧主義なところがあるのか、演奏を止めて「それでいい」と言うこともあった。
完成したのは、校門が閉まる時を知らせるチャイムが鳴った瞬間だった。達成感が強く、思わず泉平くんとハイタッチを交わした。いつの間にか、彼と打ち解けていたのだ。
そして今、私はある丘で奏翔を待っている。緑に生い茂る草原にぽつんとそびえ立つ大きな木。その隣には二人掛けの茶色い木製ベンチがあり、横にはディアスシアの花が咲くプランターが置かれている。黒いアップライトピアノもあり、その向こうには街の景色が一望できる。
泉平くんによれば、ここは奏翔が私に近づくきっかけとなった場所らしい。私はそのピアノの椅子に座り、奏翔を待つことにした。
【ここで待ってる。いつまでも待ってる。奏翔とどうしても話がしたいから。なんで死のうとしたのか、私の知らない奏翔のことを知りたいの】
彼にはそうメッセージを送ってある。丘の場所を示す地図と共に。奏翔は前のデートの時に「近くの見晴らしのいい丘に行こう」と言っていた。それがこの丘のことだろうと、私は直感している。
どれくらい待っただろうか。奏翔が現れたのは、黄昏時が始まりかけた頃だった。スマホの時計は4時半を指していた。
「悪い、待たせた」
奏翔は制服姿で私の前に現れた。私も制服なので、お互い同じだ。彼はいつもと変わらぬ優しい笑みを浮かべながら、私に近づいてきている。その姿に、苛立ちを覚えた。彼が全然つらそうな顔をしていないからだ。私はずっと心配していたのに、彼はあっけらかんとしていて、苦しみを感じさせない。
「ここ、前のデートで行こうとしてた丘なんだよ。懐かしいな。あそこのカエデの木、本当は秋の方が見栄えいいんだよ」
彼はそう言って、ぽつんとそびえ立つ木を平然と指さした。まるで泉平くんの話が嘘だったかのように。
私がぎこちなくメロディーを弾くと、彼は容赦なく「下手だ」とか「譜面通りになってない」と鬼のように指摘してきて、メンタルが壊れそうになった。彼には完璧主義なところがあるのか、演奏を止めて「それでいい」と言うこともあった。
完成したのは、校門が閉まる時を知らせるチャイムが鳴った瞬間だった。達成感が強く、思わず泉平くんとハイタッチを交わした。いつの間にか、彼と打ち解けていたのだ。
そして今、私はある丘で奏翔を待っている。緑に生い茂る草原にぽつんとそびえ立つ大きな木。その隣には二人掛けの茶色い木製ベンチがあり、横にはディアスシアの花が咲くプランターが置かれている。黒いアップライトピアノもあり、その向こうには街の景色が一望できる。
泉平くんによれば、ここは奏翔が私に近づくきっかけとなった場所らしい。私はそのピアノの椅子に座り、奏翔を待つことにした。
【ここで待ってる。いつまでも待ってる。奏翔とどうしても話がしたいから。なんで死のうとしたのか、私の知らない奏翔のことを知りたいの】
彼にはそうメッセージを送ってある。丘の場所を示す地図と共に。奏翔は前のデートの時に「近くの見晴らしのいい丘に行こう」と言っていた。それがこの丘のことだろうと、私は直感している。
どれくらい待っただろうか。奏翔が現れたのは、黄昏時が始まりかけた頃だった。スマホの時計は4時半を指していた。
「悪い、待たせた」
奏翔は制服姿で私の前に現れた。私も制服なので、お互い同じだ。彼はいつもと変わらぬ優しい笑みを浮かべながら、私に近づいてきている。その姿に、苛立ちを覚えた。彼が全然つらそうな顔をしていないからだ。私はずっと心配していたのに、彼はあっけらかんとしていて、苦しみを感じさせない。
「ここ、前のデートで行こうとしてた丘なんだよ。懐かしいな。あそこのカエデの木、本当は秋の方が見栄えいいんだよ」
彼はそう言って、ぽつんとそびえ立つ木を平然と指さした。まるで泉平くんの話が嘘だったかのように。