「それは楽采もでしょ〜?」
不信感が募る中、別の声が割り込んできた。勢いよく引き戸が開き、ツインテールでぶりっ子のような笑顔が特徴的な三羽先輩が、ずかずかと入ってくる。二度目ではあるがその目立つ登場に、反射的にイヤーカップを押さえた。
「萌響、うるさい。それは秘密だろ?やめろ、言うな!」
泉平くんは焦った様子で椅子から立ち上がり、駆け足で三羽先輩の口を塞ぎにいった。
「だってあたし、隠し事とか嘘とか嫌いだも〜ん」
しかし、当の標的は笑いながら軽く身をかわし、そのまま私の隣に座ってきた。このカップルは、相変わらずじゃれ合っているらしい。私はため息をつき、イヤーカップから手を下ろした。いずれ一緒に演奏することになる人だと言われても、気が進まない。なんだか釣り合わない気がしてならなかった。
「譜久原くんと楽采って親友じゃなくて、実は生き別れの兄弟なんだよ〜!佐竹暁則がなんと二股かけてたの!それだけじゃなくてその両方の女性に子どもがいたの。それが譜久原くんと楽采なんだって〜!」
三羽先輩は肘をつきながら語気を強めた愉快な口調で言った。言われてみれば、二人の顔はどことなく似ている。特に琥珀色の瞳が同じだ。しかし、佐竹暁則が二股をかけていて、両方に子どもがいたなんて驚きだった。彼が学生時代、成績優秀だったのは知っているが、実際にはクズだったとは想像もしていなかった。
「そうだよ。どっちも人殺しの息子だ。ちょっと怖がらせて引いてもらおうと思ったけど、結局兄貴を悪者扱いしてるみたいだな」
泉平くんは開き直ったように言ったが、無表情かつ棒読みなので、謝っているようには全く見えない。ただ、言葉として理解できたので、それ以上の追及はしないことにした。
「先に生まれたのが奏翔だから、僕は弟なんだ。母さんはそれぞれ違うけどね」
泉平くんは堂々と三羽先輩の隣に座り、手まで繋いでいる。ラブラブな雰囲気が漂い、私としては気まずさが増してくる。今すぐこの場を立ち去りたい気分だった。彼の家族にまつわる話がこんなに衝撃的で、しかもその重い話が平然と語られていることに、どうしていいか分からなかった。
「まぁ、そんなことより、廃部を回避できるなら、無理やりでも入れてあげるけどね。トランペットが吹けなくなるなんて絶対イヤだし!それに、楽采が入学式の放課後にここで楽譜を書いてたのを見たときは、ほんとびっくりしちゃったわ〜!もう、超意外だったの!」
三羽先輩は、呆れたようにしながらも懐かしそうにクスッと笑った。普通なら家族と記念撮影とかするはずの時間に、楽譜を書いているなんて、よほど曲作りが好きなんだろう。
「写真は兄貴と撮っただけで十分だったんだよ」
泉平くんは悪態をつくようにぼそっと言った。しかし、カノジョの前では感情を表に出すことができるのか、いつもの無表情とは違い、どこか表情が柔らかくなっているように見えた。
そのせいで心は混乱していた。何度も耳にした話だったが、その度に奏翔と泉平くんがどれほど深い、複雑な関係にあるのかが理解できなかった。今はその気まずさが、胸に重くのしかかる。
不信感が募る中、別の声が割り込んできた。勢いよく引き戸が開き、ツインテールでぶりっ子のような笑顔が特徴的な三羽先輩が、ずかずかと入ってくる。二度目ではあるがその目立つ登場に、反射的にイヤーカップを押さえた。
「萌響、うるさい。それは秘密だろ?やめろ、言うな!」
泉平くんは焦った様子で椅子から立ち上がり、駆け足で三羽先輩の口を塞ぎにいった。
「だってあたし、隠し事とか嘘とか嫌いだも〜ん」
しかし、当の標的は笑いながら軽く身をかわし、そのまま私の隣に座ってきた。このカップルは、相変わらずじゃれ合っているらしい。私はため息をつき、イヤーカップから手を下ろした。いずれ一緒に演奏することになる人だと言われても、気が進まない。なんだか釣り合わない気がしてならなかった。
「譜久原くんと楽采って親友じゃなくて、実は生き別れの兄弟なんだよ〜!佐竹暁則がなんと二股かけてたの!それだけじゃなくてその両方の女性に子どもがいたの。それが譜久原くんと楽采なんだって〜!」
三羽先輩は肘をつきながら語気を強めた愉快な口調で言った。言われてみれば、二人の顔はどことなく似ている。特に琥珀色の瞳が同じだ。しかし、佐竹暁則が二股をかけていて、両方に子どもがいたなんて驚きだった。彼が学生時代、成績優秀だったのは知っているが、実際にはクズだったとは想像もしていなかった。
「そうだよ。どっちも人殺しの息子だ。ちょっと怖がらせて引いてもらおうと思ったけど、結局兄貴を悪者扱いしてるみたいだな」
泉平くんは開き直ったように言ったが、無表情かつ棒読みなので、謝っているようには全く見えない。ただ、言葉として理解できたので、それ以上の追及はしないことにした。
「先に生まれたのが奏翔だから、僕は弟なんだ。母さんはそれぞれ違うけどね」
泉平くんは堂々と三羽先輩の隣に座り、手まで繋いでいる。ラブラブな雰囲気が漂い、私としては気まずさが増してくる。今すぐこの場を立ち去りたい気分だった。彼の家族にまつわる話がこんなに衝撃的で、しかもその重い話が平然と語られていることに、どうしていいか分からなかった。
「まぁ、そんなことより、廃部を回避できるなら、無理やりでも入れてあげるけどね。トランペットが吹けなくなるなんて絶対イヤだし!それに、楽采が入学式の放課後にここで楽譜を書いてたのを見たときは、ほんとびっくりしちゃったわ〜!もう、超意外だったの!」
三羽先輩は、呆れたようにしながらも懐かしそうにクスッと笑った。普通なら家族と記念撮影とかするはずの時間に、楽譜を書いているなんて、よほど曲作りが好きなんだろう。
「写真は兄貴と撮っただけで十分だったんだよ」
泉平くんは悪態をつくようにぼそっと言った。しかし、カノジョの前では感情を表に出すことができるのか、いつもの無表情とは違い、どこか表情が柔らかくなっているように見えた。
そのせいで心は混乱していた。何度も耳にした話だったが、その度に奏翔と泉平くんがどれほど深い、複雑な関係にあるのかが理解できなかった。今はその気まずさが、胸に重くのしかかる。