未弦の両親は共働きでもあり、弓彩は構ってもらえないことがよくあり、それで短気にもなり、そこは未弦と私と母さんで補いあっていた。でも母さんが植物状態になってからは私が秘密をもらしたくなくて、未弦を距離とっているので、補うのが未弦だけになっている。だからそれなりの負担があったと思う。
「うちね、楓音が避けてくるようになってからホント大変なんだ。弓彩はうちに構ってばっかだし、まぁ仕方ないけどさ、イライラすることも多くなったんだよねーそれでケンカも多くなっちゃって」
 未弦は私の顔をじーっと見ながらため息混じりに悪態をついてきた。どうやらそのせいで弓彩は家出したらしい。そしてやはり未弦は私に秘密を話してほしいらしい。でも今は弓彩だ。
「弓彩が見つかったら話す」
「えー」
 未弦は今もイライラしてるのかパンにかぶりつきながら「つまんねーの」と呟く。
「で、この4年弓彩も私と話したかったりしたんじゃないの?」
 弓彩が甘えん坊なのは知ってるし、それなりに寂しがっているだろう。でも今のところ弓彩が私に自分から話しかけてくることはない。見かけても何か怒っているようにいつもそっぽを向くし、私も避けているから聞けない。でも今となってはその理由を未弦に聞くしかないのだ。
「それは楓音がうちを避けるからだよ」
 だから聞いてんのにー、と未弦は重ねる。
「でもその理由と弓彩が家出したことに関係あるの?」
「あるよー、絶対!」
 未弦は確信しているのか、子どもみたいに「話して話して」とせがんでくる。今はそんなことをしている場合じゃないはずなのに。一刻も早く探しにいかなければいけないのに。
 私は少しイライラしてきて、今まで軽く喉を通っていたはずのカップラーメンが飲み込みにくくなった。
「でもさ話してたらその間に弓彩が熱中症とかで倒れるかもしれないじゃん。森とか山とかで遭難してるかもしれないし」