「弓彩が家出したの……うちのせいで」
「とりあえずお風呂貸すから、それから話を聞かせて」
「うん……ありがとう」
 未弦は涙ながらに頷いた。
 私は彼女と両親にお風呂を貸し、とりあえず母さんの父さんの部屋にあった服を勝手に借り、未弦用の服も洗面所に置いた。あとで謝ればいいし、洗濯をしておけば大丈夫だろう。
 奏翔にはもちろん、風呂を貸す必要がなかったので人数分の椅子を用意してもらった。
「わ、楓音って料理できるんだな」
 私がダイニングテーブルにできた朝食を並べていると奏翔は「うまそ」と顔をほころばせた。今更ながらにカレシへ手料理を振る舞っていることに気づき、一気に恥ずかしさが込み上げる。
「じ、自信はないから……そ、そのー期待しないで」
 少なくとも昨日奏翔が私に作ってくれた弁当よりかはおいしくないだろう。
「いや、うまい!」
 奏翔はポテトサラダをひとくち食べて言った。
「よかった。でもまだ、未弦達あがってきてないよ……」
 私は苦笑しながらも安堵した。
「服ありがとねー、楓音」
「サンキュー。今度一緒にパパのご飯食べような」
「あらそれは楽しみね。ママも腕を振るわなきゃ」
 しばらくして未弦とその両親がお風呂から出てきた。未弦は私が貸した黒いティシャツに黄土色のジーンズを着用している。これは汚れてもいい服だ。弓彩を探すためにも無難にした。
 私が着ている服も母さんが植物状態になる前に買ってもらった古い服なのでそれなりにサイズは小さい。でも私の身長はこの4年で3センチしか変わってないのだ。だから難なく着れる。
 そして未弦は私と同じぐらいの身長なので着れる。つまりふたりともまるで双子の姉妹のようにぴったりなのだ。