そして、この事実を知っているのは私と父さん、佐竹暁則だけだ。事故の真相は一部が隠蔽されたままメディアに報道され、私の心の中でだけその重さが残り続けている。
「自分がやったことの後始末はちゃんと最後まで自分でしろ。何年かかっても、どんなに手を尽くしてもだ。それぐらい小学生でもわかるだろ?父さんは悪くないからな。悪いのはお前だけだぞ。お前だけでなんとかしろ」
 家につくなり、父さんはそう罵ってきた。そして私の体へ投げつけるように物を渡してくる。
 それは2冊のノートで1冊は母さんの日記。もう1冊は父さんの日記だった。
【8月1日 もう中学生になったのに本当の笑顔を見せてくれることは少ない。小さい頃はもっと無邪気だったはず。たぶん。それなのに人見知りで会話も少ないし、母さんが何か嫌な発言をしてしまったのかしら】
【8月15日 楓音がなかなか本音を言ってくれないの。わかってる。なんでなの?問いかけたいけれど、母さんもよく父さんに本音がなかなか言えないからそこが似てしまったのかしら。ごめんね、母さんのせいで。母さんの父さんよく暴力振るう人だったから、子どもの頃怖くてたまらなくて、何も言えなくなって見えないように隠してるけどキズの痕も未だに残ってる。学校でもいじめ受けてたし、いっそ死んでしまいたい消えたいってこれまでもこれからもあと何回思ったらいいのかしら】
 そんな感じで母さんの日記には私を思っての自虐的な言葉がことごとく渋滞していた。いつも私には優しく笑いかけてくれていたはずなのに別人のようにも思えてくる。