「どうしよう……」
 翌朝。私は開けっ放しのクローゼットの前でへたり込んでいた。
【家から一番近い図書館の中で、1時に待ち合わせな】
 そう昨夜、奏翔からメッセージがきたのだ。
 デートなのは言うまでもない。
 連絡先を交換した時から校外で会うことになるかもしれないというのはわかっていたというのにいざそうなると、どういう格好をしたら良いのかわからなくなる。
 いつぶりだっけ。誰かと遊びに出かけるなんて。心を閉ざしている一匹狼の私にとっては非日常的だ。それが未弦だったとしても。
 未弦とはもう4年も遊んでいない。私が中2の時にあんな失態を起こしてしまってから、一度として。妹の弓彩ともだ。
 父さんなら一番驚くパターンだ。まさしく天と地がひっくり返ったみたいに。
『自分がやったことの後始末はちゃんと最後まで自分でしろ。何年かかっても、どんなに手を尽くしてもだ。それぐらい小学生でもわかるだろ?父さんは悪くないからな。悪いのはお前だけだぞ。お前だけでなんとかしろ』
 父さんはいつも口をすっぱくして言い聞かせてくる。醜い私を高圧的な口調で(ののし)るかのように。ドライアイスみたいに冷徹な言葉で。
 そんな父さんが私と遊びに行く?それこそありえない事態だ。もしあったとしても怖すぎてついていけるはずがない。
 というか、今はそんな回想に浸っている場合ではない。早く服を選んで支度しないと待ち合わせに遅れてしまう。
 奏翔が誘ってくれたことには驚いた。嬉しい気持ちは少しあった。
 しかし、最低な自分に誰かと遊ぶ資格なんてないと思ったし、テストの成績が最悪だったため、次は必ず1位を取るためにちゃんと勉強しなければならないと考えて、何度もメッセージで断りを入れた。
 そのやり取りを勉強しながらしていたので、余計にイライラして全然集中できなくて、なんなのこいつって八つ当たりしたくなった。