「それに、耳につけてる防音イヤーマフなんて、メガネと同じだろ。視力が悪いからメガネをかける。耳が過敏だから防音イヤーマフをつける。それで何が違う? 楓音、お前は何も悪くないんだよ」
奏翔はさらに訴えかけてくる。揺るぎない眼差しで、必死に。
いつか世界全体がそう認識してくれるようになったら、少しは嬉しくなるかもしれない。
けれど……。
「違うよ。メガネなら何かに見間違えたりしないでしょ?でも防音イヤーマフは、ヘッドフォンと形が似すぎてるから、勘違いされるの。形が悪いわけじゃないんだよ。自分を守るために着けてるんだから、こうなるのは仕方ないの」
私はそう言いながら、イヤーマフを指で軽く触れた。たとえステッカーで「防音用」と説明しても、きっと多くの人は気づかないだろう。そう考えると、無力感が込み上げてくる。
怒りのせいで、気づけば口が勝手に動いていた。彼の優しさが逆に苛立たしくて、私は睨みつけた。それでも奏翔は私の腕を掴む力を緩めることなく、むしろさらに優しい口調で言葉を重ねてくる。
「だからって、カンニングを疑われたり、おまわりさんに引き止められても、一言も反論しないのか? ヘッドフォンじゃないって、ちゃんと否定しないのか? 自分の意見を言っていいんだよ。それができないなら、せめて理由を教えてくれ」
彼の言葉には真剣さがあり、それでいてどこか柔らかさも感じられた。「言ってよ」と訴えかけるその表情が、私の心に少しずつ響いてくる。
どうしてそこまで執拗に関わろうとするのか。疑問が胸に浮かぶ一方で、涙が頬を伝いそうになる。
「わ、私……わたし……ひ、人殺し……」
やけくそになって、私は隠し続けてきた罪を打ち明けようとした。もう嫌われてしまえばいい。そう自暴自棄になったつもりだった。でも、いざ口にしようとすると、恐怖で体が震え、言葉が詰まってしまった。唇が震え、言葉が噛み合わず、なんとかして声を絞り出すしかできなかった。
「……絶対に嫌ったりしない。俺は、いつだって楓音の味方だよ。だから、詳しく話してほしいんだ。俺は、お前の声が聞きたいんだ」
奏翔は一瞬、しまったという顔を見せたが、すぐに強く頷き、もう一度静かに訴えてきた。その姿を見て、私の震えは次第に治まり始めた。
彼の言葉が、私の心の奥底に封じられていた「パンドラの箱」を、そっと開けていったのだ。
奏翔はさらに訴えかけてくる。揺るぎない眼差しで、必死に。
いつか世界全体がそう認識してくれるようになったら、少しは嬉しくなるかもしれない。
けれど……。
「違うよ。メガネなら何かに見間違えたりしないでしょ?でも防音イヤーマフは、ヘッドフォンと形が似すぎてるから、勘違いされるの。形が悪いわけじゃないんだよ。自分を守るために着けてるんだから、こうなるのは仕方ないの」
私はそう言いながら、イヤーマフを指で軽く触れた。たとえステッカーで「防音用」と説明しても、きっと多くの人は気づかないだろう。そう考えると、無力感が込み上げてくる。
怒りのせいで、気づけば口が勝手に動いていた。彼の優しさが逆に苛立たしくて、私は睨みつけた。それでも奏翔は私の腕を掴む力を緩めることなく、むしろさらに優しい口調で言葉を重ねてくる。
「だからって、カンニングを疑われたり、おまわりさんに引き止められても、一言も反論しないのか? ヘッドフォンじゃないって、ちゃんと否定しないのか? 自分の意見を言っていいんだよ。それができないなら、せめて理由を教えてくれ」
彼の言葉には真剣さがあり、それでいてどこか柔らかさも感じられた。「言ってよ」と訴えかけるその表情が、私の心に少しずつ響いてくる。
どうしてそこまで執拗に関わろうとするのか。疑問が胸に浮かぶ一方で、涙が頬を伝いそうになる。
「わ、私……わたし……ひ、人殺し……」
やけくそになって、私は隠し続けてきた罪を打ち明けようとした。もう嫌われてしまえばいい。そう自暴自棄になったつもりだった。でも、いざ口にしようとすると、恐怖で体が震え、言葉が詰まってしまった。唇が震え、言葉が噛み合わず、なんとかして声を絞り出すしかできなかった。
「……絶対に嫌ったりしない。俺は、いつだって楓音の味方だよ。だから、詳しく話してほしいんだ。俺は、お前の声が聞きたいんだ」
奏翔は一瞬、しまったという顔を見せたが、すぐに強く頷き、もう一度静かに訴えてきた。その姿を見て、私の震えは次第に治まり始めた。
彼の言葉が、私の心の奥底に封じられていた「パンドラの箱」を、そっと開けていったのだ。