やっとのことで奏翔を見つけた。彼がいたのは図書館の片隅で、普段なら誰も気にせず通り過ぎてしまいそうな場所だ。そこに座って、彼は本を読んでいた。ただの小説やマンガじゃなく、音楽に関する本だ。どれだけ音楽が好きなんだ、こいつは。
私が近づく足音にも気づかず、奏翔は本に夢中になっている。ページをめくる手つきも慣れていて、ただ待っているのではなく、完全に音楽の世界に浸っているようだ。あれだけしつこく誘ってきたのだから、私が来ないことを不安に思っているはずなのに、待ちくたびれた様子はなく、本に集中しすぎている。
「ごめん……奏翔」
息を整えながら、かろうじて声を出した。しかし、声が小さすぎたのか、彼はまったく気づかない。もしかして、本当に私を待つことを放棄したんじゃないかと思うほどだ。仕方なく、彼の肩を軽くトントンとたたいた。
「あ、悪い!朝一からここで待ってたんだけど、待ちくたびれて気づいたら楽譜に夢中になっちゃってさ。この本を読み終えたらちゃんと待とうとか、家まで押しかけようとか、何度も自分に言い聞かせてたんだけど、体がどうしても言うことを聞いてくれなくて――」
なんだ、この状況は。昨日、彼のピアノを強引に中断させた時と同じだ。彼の言い訳が次々と並べられるのを聞きながら、私は耐えきれず「ちょっ、ちょっと待って!」と彼を遮った。
「ごめん……遅れちゃって」
本当は私が謝るべきだと思い、顔の前で両手を合わせ、深く頭を下げながら目をきつく閉じた。
奏翔は白いワイシャツに黒のカーディガンを羽織り、ゆったりとした黒のズボンを履いている。黒いハンドバッグのようなものを肩にかけ、首からは十字架のついたアクセサリーを下げている。そのおしゃれさに、私よりもはるかに洗練されているのは明らかだった。彼の隣を歩く自分を想像すると、ますます気恥ずかしくなる。
「ホントだ!待ち合わせ時間10分も過ぎてる!」
彼はズボンのポケットからスマホを取り出し、確認すると驚いたように声を上げた。どうやら、私が遅れていることにすら気づいていなかったらしい。その呆気ない反応に、私は思わず拍子抜けしてしまった。
あれだけ心配していた自分が急にバカらしく感じて、自然と笑いがこみ上げてくる。怖がっていた自分が遠い存在のように思え、気づけば吹き出していた。
私が近づく足音にも気づかず、奏翔は本に夢中になっている。ページをめくる手つきも慣れていて、ただ待っているのではなく、完全に音楽の世界に浸っているようだ。あれだけしつこく誘ってきたのだから、私が来ないことを不安に思っているはずなのに、待ちくたびれた様子はなく、本に集中しすぎている。
「ごめん……奏翔」
息を整えながら、かろうじて声を出した。しかし、声が小さすぎたのか、彼はまったく気づかない。もしかして、本当に私を待つことを放棄したんじゃないかと思うほどだ。仕方なく、彼の肩を軽くトントンとたたいた。
「あ、悪い!朝一からここで待ってたんだけど、待ちくたびれて気づいたら楽譜に夢中になっちゃってさ。この本を読み終えたらちゃんと待とうとか、家まで押しかけようとか、何度も自分に言い聞かせてたんだけど、体がどうしても言うことを聞いてくれなくて――」
なんだ、この状況は。昨日、彼のピアノを強引に中断させた時と同じだ。彼の言い訳が次々と並べられるのを聞きながら、私は耐えきれず「ちょっ、ちょっと待って!」と彼を遮った。
「ごめん……遅れちゃって」
本当は私が謝るべきだと思い、顔の前で両手を合わせ、深く頭を下げながら目をきつく閉じた。
奏翔は白いワイシャツに黒のカーディガンを羽織り、ゆったりとした黒のズボンを履いている。黒いハンドバッグのようなものを肩にかけ、首からは十字架のついたアクセサリーを下げている。そのおしゃれさに、私よりもはるかに洗練されているのは明らかだった。彼の隣を歩く自分を想像すると、ますます気恥ずかしくなる。
「ホントだ!待ち合わせ時間10分も過ぎてる!」
彼はズボンのポケットからスマホを取り出し、確認すると驚いたように声を上げた。どうやら、私が遅れていることにすら気づいていなかったらしい。その呆気ない反応に、私は思わず拍子抜けしてしまった。
あれだけ心配していた自分が急にバカらしく感じて、自然と笑いがこみ上げてくる。怖がっていた自分が遠い存在のように思え、気づけば吹き出していた。