「ふたりとも、何やってるの?恋人みたいじゃん!……って、付き合ってたんだっけ? いや、それよりもう放課後だよ〜!」
そこへ三羽先輩が入ってきて、私は我に返り、弾かれたように奏翔との距離をとった。三羽先輩の後では未弦が唖然とした表情で言葉を失っている。
「へ、もうそんな時間!?」
奏翔は驚きながらも学ランのポケットに手を突っ込み、スマホの時計を確認した。私も急いで確認すると、いつの間にか午後の授業は終わっていた。
「何、この状況?」
未弦の後ろから入ってきた弓彩が首を傾げた。ショートカットの髪に未弦と似た顔立ちだが、眉が切れ長で、どこか鋭い印象を与えている。
弓彩は私を見つけると、まるで怒っているかのようにそっぽを向いた。私が未弦を避け気味にしているからだろうか。未弦と一緒にいるときはいつもそうだったし、そっぽを向かれて避けられている気がして、正直なところ本音がわからない。いや、私も未弦を避け気味だから、弓彩の本心を聞く機会もなかなかないけれど。
「悪い、必死な楓音を見るとつい……」
「い、いえ……」
一緒に弾いているときは必死に落ち着こうとしていたはずなのに、今は恥ずかしさが一気に込み上げてきて、ようやく言葉がいつものようにコミュ症っぽくなってしまう。でも、昨日よりは随分と打ち解けた気がする。強引なところがあるけれど、奏翔は優しいし、今更「やっぱり付き合うとかいや」とは言えない。
「元気そうでよかった。ありがとね、譜久原くん」
未弦が微笑んで言う。その目元は赤く腫れていて、私のことを心配してくれていたのがはっきりとわかる。
だから、これだけは言っておかなければならない。
「ごめんね、未弦。話の途中で逃げ出したりして」
私は未弦に近づき、顔をしっかりと見つめながら謝った。
「うん、大丈夫。楓音の気持ちはわかりにくいからさ、なんかあったらいつでも言いなよ」
未弦は優しい笑顔を向けてくれた。
「ありがとう」
口ではそう言いながらも、心の中では何度も「ごめんね」と繰り返していた。こんなにも最低な私に気を遣わせてしまって、本当に申し訳ないと思う。
でも、人を殺した罪は明かせない。できれば生涯が終わるその時まで隠し通して、墓場まで持っていきたいと思っている。
絶対に明るみに出てはいけない。どんなに非難されなくても私には生きていける場所がない。それでも、秘密を守り続けるしかないのだ。
そこへ三羽先輩が入ってきて、私は我に返り、弾かれたように奏翔との距離をとった。三羽先輩の後では未弦が唖然とした表情で言葉を失っている。
「へ、もうそんな時間!?」
奏翔は驚きながらも学ランのポケットに手を突っ込み、スマホの時計を確認した。私も急いで確認すると、いつの間にか午後の授業は終わっていた。
「何、この状況?」
未弦の後ろから入ってきた弓彩が首を傾げた。ショートカットの髪に未弦と似た顔立ちだが、眉が切れ長で、どこか鋭い印象を与えている。
弓彩は私を見つけると、まるで怒っているかのようにそっぽを向いた。私が未弦を避け気味にしているからだろうか。未弦と一緒にいるときはいつもそうだったし、そっぽを向かれて避けられている気がして、正直なところ本音がわからない。いや、私も未弦を避け気味だから、弓彩の本心を聞く機会もなかなかないけれど。
「悪い、必死な楓音を見るとつい……」
「い、いえ……」
一緒に弾いているときは必死に落ち着こうとしていたはずなのに、今は恥ずかしさが一気に込み上げてきて、ようやく言葉がいつものようにコミュ症っぽくなってしまう。でも、昨日よりは随分と打ち解けた気がする。強引なところがあるけれど、奏翔は優しいし、今更「やっぱり付き合うとかいや」とは言えない。
「元気そうでよかった。ありがとね、譜久原くん」
未弦が微笑んで言う。その目元は赤く腫れていて、私のことを心配してくれていたのがはっきりとわかる。
だから、これだけは言っておかなければならない。
「ごめんね、未弦。話の途中で逃げ出したりして」
私は未弦に近づき、顔をしっかりと見つめながら謝った。
「うん、大丈夫。楓音の気持ちはわかりにくいからさ、なんかあったらいつでも言いなよ」
未弦は優しい笑顔を向けてくれた。
「ありがとう」
口ではそう言いながらも、心の中では何度も「ごめんね」と繰り返していた。こんなにも最低な私に気を遣わせてしまって、本当に申し訳ないと思う。
でも、人を殺した罪は明かせない。できれば生涯が終わるその時まで隠し通して、墓場まで持っていきたいと思っている。
絶対に明るみに出てはいけない。どんなに非難されなくても私には生きていける場所がない。それでも、秘密を守り続けるしかないのだ。