赤点による補修はまぬがれたとはいえ、特進クラスの中では最下位に違いない。そんな現実知りたくもない、と思いながらも、無意識に動く瞳と指は言うことを聞いてくれない。
 あっという間に上位50人の中のクラスメイトの人数を数え終わる。もちろんそこには私を除いたクラスメイト全員の名前があった。まるでクラスそのものから仲間外れにされたみたいだ。
 こりゃ、完全に終わりだと項垂れて倒れるように教室と廊下を隔てる窓にもたれかかる。俯くと髪が顔を覆い隠してきて、傍から見たら妖怪と怖がられるのだろう。でもそんなことを気にしている余裕はどこにもなかった。
「うち、普通クラスの中で一番とっちゃった!全然、自信なかったのに……あれ、楓音?」
 パァッと喜びと安心の声が隣から聞こえる。それは最後になるにつれ、しおれるように小さくなっていった。聞き慣れているので顔を上げなくても声質でわかる。未弦だ。
「あ……」
 彼女は順位表を見て状況を把握したのか、一瞬言葉を失った。
「そんなこともあるよ、大丈夫だって。次頑張ろう。なんならうちが教えるよ」
 が、すぐに励ましの言葉を入れてくれる。未弦なりに気遣ってくれているのはわかる。けれど今の私には響かない。意気消沈する中、ポッと火が灯る。
 私が未弦みたいだったらよかった。成績優秀でクラスの人気者。きっとやらなければいけないこともさっとやり遂げれるんだろう。赤子の手をひねるように簡単に。
 小さな火に薪が加えられ、ブワァっと炎が大きくなる。頭に血がのぼって、怒りが湧いたのだ。話かけないで欲しかった。見て見ぬふりをしてほしかった。
 言葉は嫌味やマウントをとっているようにしか聞こえてこない。どう?うちすごいでしょ?って。優等生気取りのつもり?未弦のおっせかいやろう!
 遠回しに矢が心へ突き刺さり、深い傷が入る。こんなのは聞きたくもなかった。もう構わないでほしい。早々に立ち去ってやろう。