「え……」
 翌日、廊下に貼り出されたテストの順位表を見て、思わず言葉を失った。目の前には上位50人の名前が掲示されていて、未弦は普通クラスの生徒でありながら10位以内に入っている。さすがだと思ったが、それに比べ私の名前はどこにも見当たらない。リストはほとんどクラスメイトで埋め尽くされ、たまに普通クラスの名前が混じるだけだった。
 見間違いかと思い、50位からじっくりと探し始める。1年生の時は25位前後で何とか踏みとどまっていたが、本来目指すべきは1位のはずだ。それなのに、どれだけ探しても私の名前は見当たらなかった。未弦の名前があるところまで上がっていっても、そこにはクラスメイトの名前しかない。その現実を突きつけられた瞬間、魂が抜けたような感覚に襲われた。
 そして体が冷え、顔が暗くなる。
 何が原因だったのだろうか。テスト勉強による過労や寝不足で体調を崩したせいだろうか。いや、そもそも勉強範囲を間違えていたのかもしれない。どちらにしても、納得できる理由ではあった。
 昨夜は家に帰ると、体がずっしりと重く、ベッドに倒れ込むように眠り込んだ。相当疲れていたのだろう。寝不足で風邪をひいていてもおかしくない。本末転倒とはまさにこのことだ。
 高校生になっても体調管理ができていない自分に不覚にもため息が漏れる。聴覚過敏が治らないのも、この過労癖が原因に違いない。
 戻ってきた答案用紙を見ても、どれも35点前後。先生が採点を間違えたのではないかと、わずかな希望を持って模範解答と照らし合わせてみた。しかし、目の前にあるのは空白の解答欄や、ズレた答え、部首やスペルのミスというケアレスミスばかりだった。焦りと不安で、覚えたことが頭の中でごちゃごちゃになり、何度も回答を書き直した記憶だけが蘇る。
 赤点による補修は免れたものの、特進クラスでは最下位に違いない。そんな現実を知りたくなかったが、無意識に瞳と指は動き、言うことを聞いてくれなかった。
 あっという間に、上位50人にいるクラスメイトの人数を数え終わる。もちろん、私以外のクラスメイト全員の名前が並んでいた。まるでクラスそのものから仲間外れにされたような気分だった。