「なるほどー!……って、あたしは怖がったりしてないよ。むしろ、お化けとか平気だからひとりでも全然行けるし。でも、楽采がいた方が楽しいや」
三羽先輩は納得したように声を上げたが、すぐにツッコミを入れて、泉平くんの背中を軽く叩いた。
「痛いって。でも、カレシなんだから僕はずーっと萌響の隣にいるよ」 「ありがとー!嬉しいー!一生一緒に年取っていきたいけど、楽采は譜久原くんのボディガードだからダメかな〜?うふふっ!」
泉平くんは照れ笑いしながらカッコつけた。三羽先輩は食事中にもかかわらず勢いよく彼に抱きついて、それでも口はまだ満たされてない様子だった。
「確かに僕は兄貴のボディガードだけど、萌響とは一生歳を重ねていくつもりだよ。萌響がいなかったら、今頃兄貴と一緒に舞台に立つなんて夢のまた夢だったから。兄貴に笑ってほしくて、曲作りを始めたし、部活にも誘ったんだ。それが僕の願いだったからね。クラリネットも萌響が教えてくれた。本当に感謝してるよ。しかも、兄貴にもカノジョができたし、将来も安心ってことで、安心したよ」
泉平くんはそう言って、優しい目で三羽先輩を見守りながら、少し微笑んだ。三羽先輩もそれを聞いて「じゃあ、一生一緒だね!やったー!」と喜びの声を上げた。
「ラブラブなのはいいけど、なんで楽采が楓音の隣なんだ?俺も隣に座ってるけど、男二人に挟まれたら楓音がかわいそうだろ?」
奏翔が肩をすくめて割り込んできた。確かに私は奏翔と楽采に挟まれて弁当を食べていた。私に手話を教えようと泉平くんは近くにいるのだろうが、三羽先輩がいるせいで騒がしく感じる。聴覚過敏の症状を和らげるために図書室登校しているのに、こうでは意味がない気がしていた。
「え、まさか兄貴、嫉妬してるの?」
泉平くんは少し悪戯っぽくニヤリと笑いながら言った。しかし、その目は驚きで丸くなっていた。
「俺だって嫉妬くらいするよ。それに手話は俺が楓音に教える。カノジョなんだから、楽采だと絶対にスパルタになるだろ」
奏翔は席を立ち、「離れろー」と言いながら、泉平くんの手を引っ張り、座席をグイグイと動かした。奏翔は過去に母親から厳しく指導された経験があるからだろう。だからこそ、私には同じ経験をさせたくないと思っているのかもしれない。
それに泉平くんの近くでピアノを弾いていたとき、彼は完璧主義な一面があるのか、何度も指摘され、メンタルが壊れそうになったこともあった。もし手話も同じ調子で教えられたら、私の過労癖が悪化し、体調を崩してしまうかもしれない。それが心配だった。 「悪い、兄貴優しいから隣で教えてても大丈夫かと安直に考えた」
「楽采はいつまで俺のボディーガードでいるつもりなんだ?いや、執事か?俺が兄だから、それにせっかくのカノジョを守らせろ。じゃないと俺は不甲斐ないカレシだってまた夜中に泣くぞ?」
奏翔が必死に訴えると、泉平くんはすかさず言葉を返した。
「それはダメだ。ちゃんと楓音さんとは一定の距離を取るから泣くな」と。
その後、泉平くんは三羽先輩の右隣に座った。 「ありがとな、楓音さんも。お前が兄貴の隣で弾いてくれたおかげで、定期演奏会は無事成功、いや、大成功に終えることができた。お前は、僕の願いを叶えてくれたひとりだ。これからも、兄貴の隣にいてほしい」
それから楽采は少し椅子を斜めにして、机に片手をついて支えながらこちらを向き、静かに言った。その姿勢が少し危なげではあった。
「俺からも頼む。舞台で一緒に弾いていた時、俺はひとりじゃないって感じた。つらかった気持ちが一瞬で吹き飛んで、今まで以上に自信を持ってピアノを楽しめた。だから、これからも俺の隣で弾いててほしい」
奏翔も便乗して、私の隣に座り直し、手を差し出してきた。その手を両手で包み込み、もちろんだよ、と首を縦に振った。
三羽先輩は納得したように声を上げたが、すぐにツッコミを入れて、泉平くんの背中を軽く叩いた。
「痛いって。でも、カレシなんだから僕はずーっと萌響の隣にいるよ」 「ありがとー!嬉しいー!一生一緒に年取っていきたいけど、楽采は譜久原くんのボディガードだからダメかな〜?うふふっ!」
泉平くんは照れ笑いしながらカッコつけた。三羽先輩は食事中にもかかわらず勢いよく彼に抱きついて、それでも口はまだ満たされてない様子だった。
「確かに僕は兄貴のボディガードだけど、萌響とは一生歳を重ねていくつもりだよ。萌響がいなかったら、今頃兄貴と一緒に舞台に立つなんて夢のまた夢だったから。兄貴に笑ってほしくて、曲作りを始めたし、部活にも誘ったんだ。それが僕の願いだったからね。クラリネットも萌響が教えてくれた。本当に感謝してるよ。しかも、兄貴にもカノジョができたし、将来も安心ってことで、安心したよ」
泉平くんはそう言って、優しい目で三羽先輩を見守りながら、少し微笑んだ。三羽先輩もそれを聞いて「じゃあ、一生一緒だね!やったー!」と喜びの声を上げた。
「ラブラブなのはいいけど、なんで楽采が楓音の隣なんだ?俺も隣に座ってるけど、男二人に挟まれたら楓音がかわいそうだろ?」
奏翔が肩をすくめて割り込んできた。確かに私は奏翔と楽采に挟まれて弁当を食べていた。私に手話を教えようと泉平くんは近くにいるのだろうが、三羽先輩がいるせいで騒がしく感じる。聴覚過敏の症状を和らげるために図書室登校しているのに、こうでは意味がない気がしていた。
「え、まさか兄貴、嫉妬してるの?」
泉平くんは少し悪戯っぽくニヤリと笑いながら言った。しかし、その目は驚きで丸くなっていた。
「俺だって嫉妬くらいするよ。それに手話は俺が楓音に教える。カノジョなんだから、楽采だと絶対にスパルタになるだろ」
奏翔は席を立ち、「離れろー」と言いながら、泉平くんの手を引っ張り、座席をグイグイと動かした。奏翔は過去に母親から厳しく指導された経験があるからだろう。だからこそ、私には同じ経験をさせたくないと思っているのかもしれない。
それに泉平くんの近くでピアノを弾いていたとき、彼は完璧主義な一面があるのか、何度も指摘され、メンタルが壊れそうになったこともあった。もし手話も同じ調子で教えられたら、私の過労癖が悪化し、体調を崩してしまうかもしれない。それが心配だった。 「悪い、兄貴優しいから隣で教えてても大丈夫かと安直に考えた」
「楽采はいつまで俺のボディーガードでいるつもりなんだ?いや、執事か?俺が兄だから、それにせっかくのカノジョを守らせろ。じゃないと俺は不甲斐ないカレシだってまた夜中に泣くぞ?」
奏翔が必死に訴えると、泉平くんはすかさず言葉を返した。
「それはダメだ。ちゃんと楓音さんとは一定の距離を取るから泣くな」と。
その後、泉平くんは三羽先輩の右隣に座った。 「ありがとな、楓音さんも。お前が兄貴の隣で弾いてくれたおかげで、定期演奏会は無事成功、いや、大成功に終えることができた。お前は、僕の願いを叶えてくれたひとりだ。これからも、兄貴の隣にいてほしい」
それから楽采は少し椅子を斜めにして、机に片手をついて支えながらこちらを向き、静かに言った。その姿勢が少し危なげではあった。
「俺からも頼む。舞台で一緒に弾いていた時、俺はひとりじゃないって感じた。つらかった気持ちが一瞬で吹き飛んで、今まで以上に自信を持ってピアノを楽しめた。だから、これからも俺の隣で弾いててほしい」
奏翔も便乗して、私の隣に座り直し、手を差し出してきた。その手を両手で包み込み、もちろんだよ、と首を縦に振った。