定期演奏会から1週間が経ち、あっという間に時間は過ぎた。
泉平くんはレコード会社から曲の出来を褒められ、その7曲を部員で再度演奏してCDにして世に出すことが決まった。そして、県のテレビ局が撮ったビデオもその曲のおかげで視聴率が大幅に上がったと褒められ、泉平くんは作曲家として順調に前進していった。
私は相変わらず図書室登校を続けていたが、昼休みになると未弦と奏翔と泉平くん、三羽先輩が集まり、一緒にお弁当を食べたり、泉平くんによる手話教室を受けたりしていた。
「じゃ、改めて問うぞ。これ、わかるか?」
泉平くんはそう言うと、人差し指を出し、手首をひねるようにして横に移動させた。
今思えば、泉平くんがあの時クイズを出してきたのは、奏翔の耳が聞こえないことをさりげなく教えようとしてくれていたのかもしれない。その時、私は奏翔に自分の声だけが一時的に聞こえていたことを知らなかったため、全くそのことに気づけなかった。
とはいえ、今更もう1回クイズを出されても、教えてもらっていないので頭に浮かぶのはもちろん、クエスチョンマークだ。
「え、わかんないよー。うちも一緒に演奏する部員だし、楓音助けるための協力者だからって部活の合間に教えてもらったりしたけど、それはまだ習ってないよ」
未弦も同じようで、口を尖らせて悪態をついていた。
ちなみに、未弦が奏翔のことを睨んでいたのは演技だと言っていた。弓彩が奏翔の体をポカポカ叩いていたのも、裏でふたりが協力していたことを感じさせないための演出だったらしい。本当に嫉妬して怒っているようにしか見えなかったので「全然気づけなかった」と返すと、未弦は「まじ?うち役者とかやってもいけるかも……って、夢はオーケストラに入ることなんだから別に磨かなくていっか!」といじわるそうにケラケラ笑っていた。
「あたしもー!協力は全然してないけど、泉平くんはカレシだし、譜久原くんはそのお兄さんだから、泉平くんと将来結婚するためにも家族と仲良くしなくちゃって理由で習ってるの〜。でもそれはまだだよ〜!」
三羽先輩も口をペンギンのようにしてブツブツぼやいている。そのラブラブそうな発言に泉平くんは「萌響ったら〜」とやや恥ずかしそうに頬を赤らめ、頭をぽりぽりと軽くかいていた。それからまた口を開いた。
「隣にいるっていう意味だ。あんまり使わなそうだけどさ。例えば、遊園地でジェットコースターに乗る時やお化け屋敷に入る時、萌響は怖がったりするだろ?そんな時、背中を押してやるために使うんだ」
泉平くんは、未弦と三羽先輩を納得させるように堂々と力説した。何も口を出していなかった私は、すっかり納得してしまった。昔から絶叫系が苦手だから、想像するだけで心臓がドキドキしてくる。秋になれば修学旅行があるけれど、私は買い物だけして過ごそうと考えているほどだ。
泉平くんはレコード会社から曲の出来を褒められ、その7曲を部員で再度演奏してCDにして世に出すことが決まった。そして、県のテレビ局が撮ったビデオもその曲のおかげで視聴率が大幅に上がったと褒められ、泉平くんは作曲家として順調に前進していった。
私は相変わらず図書室登校を続けていたが、昼休みになると未弦と奏翔と泉平くん、三羽先輩が集まり、一緒にお弁当を食べたり、泉平くんによる手話教室を受けたりしていた。
「じゃ、改めて問うぞ。これ、わかるか?」
泉平くんはそう言うと、人差し指を出し、手首をひねるようにして横に移動させた。
今思えば、泉平くんがあの時クイズを出してきたのは、奏翔の耳が聞こえないことをさりげなく教えようとしてくれていたのかもしれない。その時、私は奏翔に自分の声だけが一時的に聞こえていたことを知らなかったため、全くそのことに気づけなかった。
とはいえ、今更もう1回クイズを出されても、教えてもらっていないので頭に浮かぶのはもちろん、クエスチョンマークだ。
「え、わかんないよー。うちも一緒に演奏する部員だし、楓音助けるための協力者だからって部活の合間に教えてもらったりしたけど、それはまだ習ってないよ」
未弦も同じようで、口を尖らせて悪態をついていた。
ちなみに、未弦が奏翔のことを睨んでいたのは演技だと言っていた。弓彩が奏翔の体をポカポカ叩いていたのも、裏でふたりが協力していたことを感じさせないための演出だったらしい。本当に嫉妬して怒っているようにしか見えなかったので「全然気づけなかった」と返すと、未弦は「まじ?うち役者とかやってもいけるかも……って、夢はオーケストラに入ることなんだから別に磨かなくていっか!」といじわるそうにケラケラ笑っていた。
「あたしもー!協力は全然してないけど、泉平くんはカレシだし、譜久原くんはそのお兄さんだから、泉平くんと将来結婚するためにも家族と仲良くしなくちゃって理由で習ってるの〜。でもそれはまだだよ〜!」
三羽先輩も口をペンギンのようにしてブツブツぼやいている。そのラブラブそうな発言に泉平くんは「萌響ったら〜」とやや恥ずかしそうに頬を赤らめ、頭をぽりぽりと軽くかいていた。それからまた口を開いた。
「隣にいるっていう意味だ。あんまり使わなそうだけどさ。例えば、遊園地でジェットコースターに乗る時やお化け屋敷に入る時、萌響は怖がったりするだろ?そんな時、背中を押してやるために使うんだ」
泉平くんは、未弦と三羽先輩を納得させるように堂々と力説した。何も口を出していなかった私は、すっかり納得してしまった。昔から絶叫系が苦手だから、想像するだけで心臓がドキドキしてくる。秋になれば修学旅行があるけれど、私は買い物だけして過ごそうと考えているほどだ。