「会社、辞めたいです。帰ってくると気持ちが薄れたりするけど、少しでも思ってるなら、動いた方が良いと思う」
「よし。じゃあルール決めよう。焦らないこと、進展があれば逐一報告すること。あと、気持ちは偽らないこと」
そう言って小指を立てて、私に差し出した。指切りか。
立てられた小指に自分の小指を絡めると、〝約束ね〟とこてんと顔を左に傾けて私に笑いかける。
気持ちは偽らないこと。
私にとって一番大事な約束。
目の前の壁から逃げようとすぐに嘘をつくから、もうそんな自分からは離れたい。
強く頷いて、〝約束〟と誠さんの言葉を繰り返した。
「肉じゃが、冷めちゃいましたね」
「美味しいものは冷めても美味しいから。食べちゃおう」
まだ少し残る嗚咽と鼻水を、肉じゃがを頬張って捨てた。
本当だ。冷めてるけど、温かい時より味が染み込んだ気がして、さらに美味しい。
美味しいものを食べたら、また明日から頑張れる。
誠さんのサポートと自分自身の頑張りで、幸せに向かって進まなきゃ。