辞めると決めて行っても仕事が辛いのは同じで、その気持ちがバレないか周りの目を気にしていたからか、いつもより疲れた。


でも、誠さんの明るい笑顔の出迎えで、気が緩んだのが分かった。




そして、打ち明けたこともない私の好物を言い当てて、夜ご飯のメニューにしてくれたらしい。




「いただきます!」


「いただきます」




誠さんの元気な声につられて声を出すと、箸を持ってすぐに肉じゃがに手をつけた誠さん。




「るいさん家の肉じゃがは、どんな感じ?」


「牛肉とじゃがいもと人参と玉ねぎと…、糸こんにゃくです」


「家庭の色が出るよね。俺の家も牛肉だったんだけど、奥さんの実家が鶏肉で。るいさんの家は、糸こんにゃくを入れる珍しい家」


「珍しいかな?家はいつもそれだったから、何も思わなかったかも」


「そういうもんです。自分が基準になると、他の人の話を聞いて珍しいって思うんです。でも他人から見たら、るいさんも珍しいんですよ?」