数時間だけでも一人じゃないと分かって欲しくて、人に助けられる温もりを与えたかった。
…家についた。
一度振り返って確認しただけで、今はついて来ているか確証がない。
首に鈴もつけていないし、鳴きもしない。
振り返る前に、猫ちゃんに向ける笑顔を練習して。
「…あ、居る。良かったぁ」
練習以上の笑顔を見せられたと思う。私の顔を見て、〝ニャ〟と高く鳴いたから。
懐かれてしまっては、愛情を分けるしかない。
「入りたい?」
「…」
顎をくすぐると、返事の代わりに聞こえたゴロゴロ音。
都合良く解釈して、猫ちゃんを抱き上げると扉の鍵を開けて、中に招き入れた。