「やっぱり食べたかったな…」



腕時計の短い針は十一の少し右を指している。


仕方ない。今日は諦めて土日に一層満喫できる計画を立てよう。



そう決めて地面ばかり見ていた視線をまっすぐ前に向けると、少し先のベンチの下で蹲っている猫を見つけた。


三毛猫で、子猫から大人になりかけの華奢な体をしている。



近くで車と人の接触事故があったらしく、野次馬と救急車が多く居たにも関わらず、そちらには目もくれずに猫に一直線。





「可愛い猫ちゃんだねー」


「ニャ」




私の言葉に小さな声で返答があって、手を伸ばすとその手をペロっと舐めた。



…癒される。これだけで癒される。

近くの席のお局とは、まるで違う。