教室で伊月と顔を合わせる事が気恥ずかしかった俺は化学の授業をサボり屋上で時間をやり過ごした。たった一日、伊月が迎えに来なかっただけで腹を立て「寂しい」と喚き散らした自分が駄々をこねている子どもの様で恥ずかしかった。
(・・・寂しい)
しかも伊月は「もう迎えには行きません!」とキッパリ言い切った。
(どうしてだ?)
喧嘩をした訳でもない。
(伊月、俺、なんかしたのか?)
俺は屋上のコンクリートに大の字になりどこまでも高い夏の空を仰いだ。
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
白い雲がたなびく空を眺めたところでそれはなんの解決にも至らなかった。授業終了のチャイムが鳴り俺は仕方なく屋上の扉を閉めた。力無く階段を降りると廊下で騒がしいクラスメートに捕まってしまい「どこに行ってたんだ」と根掘り葉掘り訊ねられた。適当な返事をしていると話は次第に大きくなり俺は彼女と保健室にしけ込んでいた事になっていた。
「なに、長谷川、彼女出来たのか!」
「いねぇよ」
「誤魔化すなよ」
「誤魔化してねぇよ」
野次馬を無視して椅子に座ると今度は陸上部の面々が机の周りに集まって来た。
「なんもねぇよ」
「またまた隠して、今日のおまえ変だもんな」
「変じゃねぇよ」
素知らぬ振りを決め込んだが話しはそれだけでは終わらなかった。そのうち賑やかしい輪を潜り抜け伊月が席に着いた。
「ラブレーター貰ったんだろ」
「そんなんじゃねぇよ」
いつの間にか俺には架空の彼女が出来ていた。
「キスとかしたのか?」
「そんなもんするかよ」
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
授業開始のチャイムが鳴ると同時に現代国語の教師が「教科書を開いて」と声を掛けた。けれど俺は伊月の事が気になりぼんやりと肩甲骨が浮かび上がる背中を眺めていた。
「長谷川!150ページから読んでみろ!」
「は、はい!」
俺は教科書の日本語を目で拾いながら頭の中では伊月の事ばかりを考えていた。
(伊月、俺に彼女が出来たって思っただろうな)
伊月の反応が見たかった。振り向かない伊月、嫉妬でも何でも良いから俺を見て欲しいと思った。
(・・・寂しい)
しかも伊月は「もう迎えには行きません!」とキッパリ言い切った。
(どうしてだ?)
喧嘩をした訳でもない。
(伊月、俺、なんかしたのか?)
俺は屋上のコンクリートに大の字になりどこまでも高い夏の空を仰いだ。
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
白い雲がたなびく空を眺めたところでそれはなんの解決にも至らなかった。授業終了のチャイムが鳴り俺は仕方なく屋上の扉を閉めた。力無く階段を降りると廊下で騒がしいクラスメートに捕まってしまい「どこに行ってたんだ」と根掘り葉掘り訊ねられた。適当な返事をしていると話は次第に大きくなり俺は彼女と保健室にしけ込んでいた事になっていた。
「なに、長谷川、彼女出来たのか!」
「いねぇよ」
「誤魔化すなよ」
「誤魔化してねぇよ」
野次馬を無視して椅子に座ると今度は陸上部の面々が机の周りに集まって来た。
「なんもねぇよ」
「またまた隠して、今日のおまえ変だもんな」
「変じゃねぇよ」
素知らぬ振りを決め込んだが話しはそれだけでは終わらなかった。そのうち賑やかしい輪を潜り抜け伊月が席に着いた。
「ラブレーター貰ったんだろ」
「そんなんじゃねぇよ」
いつの間にか俺には架空の彼女が出来ていた。
「キスとかしたのか?」
「そんなもんするかよ」
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
授業開始のチャイムが鳴ると同時に現代国語の教師が「教科書を開いて」と声を掛けた。けれど俺は伊月の事が気になりぼんやりと肩甲骨が浮かび上がる背中を眺めていた。
「長谷川!150ページから読んでみろ!」
「は、はい!」
俺は教科書の日本語を目で拾いながら頭の中では伊月の事ばかりを考えていた。
(伊月、俺に彼女が出来たって思っただろうな)
伊月の反応が見たかった。振り向かない伊月、嫉妬でも何でも良いから俺を見て欲しいと思った。