きっかけは、蔵の中の大掃除だった。徹底的に掃除をするため、先祖代々受け継がれていた宝とかゴミを庭に出していたとき、その古文書に気が付いた。表紙に小栗忠順の名がある。幕末の徳川幕府官僚で、諸外国との交渉に深くかかわり、横須賀の造船所を建設した大人物だ。
僕の家のご先祖は幕臣で、小栗忠順と共に渡米し条約を締結しているから、そういった縁で小栗の名前が書かれた古文書があったのだろう。
「こういった歴史的な文書は、そういうのを研究する施設に贈与するのがいいんじゃないかな」
そんな独り言を呟きながら、ページをペラペラめくっていたら、地図が見えた。書かれた山や川の名前からすると、このあたりの地図のようだ。
「今とは地形がかなり違うけど、河口の島は変わってないね」
河口に浮かぶ島には、幕府が建設した砲台の跡がある。小栗や僕のご先祖様が外国との戦争に備えて造ったものだ。今は荒れ果てて、進入禁止になっているけど、釣りをするときボートで渡る人が絶えない。
続いて日本語ではなくアルファベットの文字が目に入ってきた。
「なんだこれ?」
中身の大部分を占める日本語と同様、アルファベットの文章も意味不明だ。でも、今の時代、検索すれば、分からないことなんて何もない。
様々な検索結果をまとめると、こんなことが分かった。河口の島の旧砲台跡に徳川幕府の軍資金十数万両が隠されている!
僕は震える手で古文書の地図をノートに書き写した。自転車に乗って家を飛び出す。蔵の片づけ中だった父が大急ぎで外出する僕を見て「こら、さぼるな! 戻ってこい!」と怒鳴ったけど、大判小判がざっくざくなことを知ったら逆に僕の後押しをするはずだ。
河口の近くを自転車で走り回り、ノートに書き写した古文書の地図と実際の地形を見比べる。間違いない。ここだ。
僕は堤防の斜面に腰を下ろした。徳川の埋蔵金が隠された中洲の島を眺める。十数億円の宝が目の前にあるのだ。興奮で全身が熱くなる。黄金が手に入れば、人生は望みのままとなるだろう。そう思うと自然に顔がほころんでくる。
そのときだった。
「ケイ君、何しているの?」
僕と同じくらい顔を赤くした女の子が隣に座り、僕の顔を見つめて、そう聞いてきた。
大金をゲットしたら何をしようかと悩んでいるんだよ、とは言えない。
僕の家のご先祖は幕臣で、小栗忠順と共に渡米し条約を締結しているから、そういった縁で小栗の名前が書かれた古文書があったのだろう。
「こういった歴史的な文書は、そういうのを研究する施設に贈与するのがいいんじゃないかな」
そんな独り言を呟きながら、ページをペラペラめくっていたら、地図が見えた。書かれた山や川の名前からすると、このあたりの地図のようだ。
「今とは地形がかなり違うけど、河口の島は変わってないね」
河口に浮かぶ島には、幕府が建設した砲台の跡がある。小栗や僕のご先祖様が外国との戦争に備えて造ったものだ。今は荒れ果てて、進入禁止になっているけど、釣りをするときボートで渡る人が絶えない。
続いて日本語ではなくアルファベットの文字が目に入ってきた。
「なんだこれ?」
中身の大部分を占める日本語と同様、アルファベットの文章も意味不明だ。でも、今の時代、検索すれば、分からないことなんて何もない。
様々な検索結果をまとめると、こんなことが分かった。河口の島の旧砲台跡に徳川幕府の軍資金十数万両が隠されている!
僕は震える手で古文書の地図をノートに書き写した。自転車に乗って家を飛び出す。蔵の片づけ中だった父が大急ぎで外出する僕を見て「こら、さぼるな! 戻ってこい!」と怒鳴ったけど、大判小判がざっくざくなことを知ったら逆に僕の後押しをするはずだ。
河口の近くを自転車で走り回り、ノートに書き写した古文書の地図と実際の地形を見比べる。間違いない。ここだ。
僕は堤防の斜面に腰を下ろした。徳川の埋蔵金が隠された中洲の島を眺める。十数億円の宝が目の前にあるのだ。興奮で全身が熱くなる。黄金が手に入れば、人生は望みのままとなるだろう。そう思うと自然に顔がほころんでくる。
そのときだった。
「ケイ君、何しているの?」
僕と同じくらい顔を赤くした女の子が隣に座り、僕の顔を見つめて、そう聞いてきた。
大金をゲットしたら何をしようかと悩んでいるんだよ、とは言えない。