「それは難しい問題だなぁ」

それから思考がぐるぐると渦巻いて、消えることはなかった。だから僕は姉ちゃんを頼ることにした。相談相手が姉ちゃんなのは、なんだか悔しいけれど、力になってくれることは間違いない。
姉ちゃんは僕の話を笑うことなく聞くと、ため息を吐いた。

「涼はその子のこと助けたいの?」

姉ちゃんが机に置いてあったクッキーをつまみながらいう。普段通りを心がけていてくれているのだろうか。

「…うん。でも僕が関わるのは違う気がするんだ。でもその子も僕に優しくしてくれたから、お返しはしたい。」

そう告げてから、僕は顔に熱が集まっていくのを感じた。
これじゃ、まるで僕が守本さんのことが好きみたいだ。

「そっかぁ。」

けれど姉ちゃんは気がつかない。

「涼が助けたいと思うなら、行動起こすしかなくない?」
「…そうだよね。」
「どっちにしろ後悔するなら、やらない後悔より、やる後悔でしょ。まあ、これ受け売りなんだけど。」

姉ちゃんは誇らしそうに胸を張ってそう言い切った。
僕はその言葉がストンと胸の中に置いていくのを感じる。確かにそうだ。僕はどっちにしろ後悔するだろう。
それなら…

「ありがと、姉ちゃん。」

僕は未だクッキーを口に詰め込んでいる姉ちゃんに礼を言った。
自由奔放な人だけど、こういう時にいつも力になってくれる。僕は先ほどまでとは違う面持ちで、クッキーに手を伸ばす。

「いやぁ。涼にもとうとう好きな人できたかぁ!」
「…ゴホッ」

そんな姉ちゃんの言葉に、僕がクッキーを吹き出しそうになったのは、言うまでもない。