二人が赤く頬を染め合って笑っている時、酢谷涼のトートバッグから、水色のハードカバーの本が消えた。
そして場所は移ろい、ここは田舎町。
辺りを森に囲まれた一本道に、歩いている少年がいる。
その少年は頬に涙を落としていて、その顔は痛々しく傷つけられている。顔を歪ませ、泣き声を抑えるように口を覆っている。
その少年の前に、キラキラ光るものを見つけた。
まるで運命のように視線を奪われ、思わず手に取る。
それは水色のハードカバーの文庫本サイズの本だった。
そのタイトルを見た瞬間、少年はこれでもかというくらいに目を見開いた。
そのタイトルはこうだった。
『人の好きなものが知れる本』