先輩から届いたメールに添付されていた画像は、あの日撮られた二枚の写真。『僕と迅堂くん』そして『僕と土佐辺くん』が隠し撮りされたものだ。

『好きな人とのツーショット、嬉しい?』

 煽るようなメールの文面。先輩はどういうつもりで写真を送ってきたんだろう。なにか思惑があるのか。それとも、本当に僕を喜ばせるために?

 スマホ画面には太陽のような眩しい笑顔の迅堂くんと僕が映し出されている。わざわざ休憩時間に声を掛けてくれたことが嬉しくて、いつもより感情が表に現れてしまったのかもしれない。この表情を見れば、聡い人には僕が迅堂くんのことが好きだと分かってしまう。

「安麻田、お待たせ」
「うわっ」

 部屋のドアが開き、ペットボトルとコップを持った土佐辺くんが入ってきた。写真に見入っていた僕は彼が階段を上がってくる足音に気付かず、急に声を掛けられてびっくりしてしまった。咄嗟に画面を消そうとして手が滑り、ベッドの下にスマホを落としてしまう。わたわたと慌てる僕を見て、土佐辺くんは笑いながら勉強机に持ってきたトレイを置いた。

「なんだ。興味ないとか言って、やっぱエロ本探してたんだろ」
「ち、違う。びっくりしただけだから」

 僕が動揺している間に土佐辺くんがスマホを拾い上げた。画面はまだ点いている。写真を見られたらマズい。彼が見てしまう前にスマホを取り返さなくては。

 考えるより身体が勝手に動いて、自分のスマホを掴もうと手を伸ばす。驚いた土佐辺くんは反射的に身体を捻り、バランスを崩して僕のほうへと倒れ込んだ。

「ぐえっ」
「わ、悪い。大丈夫か」

 ベッドに腰掛けていた僕は仰向けに倒れ、その上に土佐辺くんが伸し掛かる。一瞬彼の全体重が掛かり、潰れたカエルのような呻き声を上げてしまった。すぐに身体を退かし、謝る土佐辺くん。

 しかし、彼はベッドの上に転がる僕のスマホを再び手に取った。