重い足取りでカウンターに向かえば、既に本を借りる手続きを終えた土佐辺くんが待っていた。

「遅かったな。体調悪いのか?」
「ううん、大丈夫」
「そんならいいけど」

 無理に笑顔を繕えば、あまり納得していなさそうな表情ではあるが、それ以上は聞かれずに済んだ。心配してくれたのに嘘をついて誤魔化してばかり。

 駅までの道を並んで歩く。重い本は当たり前のように土佐辺くんが持ってくれていて、そこにも申し訳なさを感じた。

「さっきの安麻田の案、檜葉に相談してみるか。写真撮るならモデルと服がいるだろ。女子に頼んで作ってもらおう」
「そうだね」
「オレたちは借りた資料を見て、言葉から服の形をイメージ出来ないものをピックアップしておくか」
「うん、じゃあ僕んちに」

 そこまで言って、ふと気付く。

 なんだかんだで上手くいかなかったけど、先週は二人の邪魔をしないように帰宅時間を遅らせたりもした。今日、迅堂くんのアルバイトはお休みだったはず。これから帰宅して、もし亜衣と迅堂くんが何かの真っ最中だったら困る。

「あっ、あの」
「うん?」
「今日ちょっと都合悪くて。だから、土佐辺くんのうちにお邪魔してもいい?」

 僕の言葉に土佐辺くんは目を丸くした。

「……オレんちに来たいの?」
「う、うん」
「いいよ。散らかってるけど」
「ホント? ありがとう!」

 安堵の笑みを浮かべると、土佐辺くんも嬉しそうに笑い返してくれた。